右派は左派と比べると結束が弱く、危機的な状況に陥ると度々内部分裂や対立が起こるという弱点がある。今回もそれが如実に出たといっていいだろう。
8年前、朴槿恵罷免&文在寅が大統領になった選挙と何が違う?
選挙戦がスタートして間もなく、今回の最有力候補である李在明氏が筆者の住む釜山に遊説に訪れるとのことで足を運んでみた。実際の印象やどのようなことを話すのか間近で見てみたいという興味があったためである。
遊説には支持者が多く集まり、時折「李在明コール」も沸き起こっていた。しかし釜山は右派の牙城とされる土地柄ということもあってか、そこまでの熱量は感じられなかった。とはいえ、これから投票日に向けて、日を追うごとに盛り上がっていくことだろう。
確かに現状では「李在明大統領誕生」のシナリオありきで進んでいるかのようである。それでも、今回は大統領選挙に対する国民の反応がどこか冷めている感じもあり、朴槿恵(パク・クネ)氏が罷免となり、文在寅(ムン・ジェイン)氏が当選した8年前の大統領選挙とは異なる点が多々あると感じられる。
2017年当時は右派に対する失望や嫌悪が増し、文氏に向かうところ敵なしといった感じであった。しかし今回は、8年前と同じく左派が有利でありながらも、現在も尹氏を支持する若者を中心としたグループが韓国の各地で「尹アゲイン」と称してデモを続行。戒厳令の正当性や弾劾は不当とする主張を掲げ、今回の大統領選挙は仕組まれたものだと主張している。
世代間で政治的思想の隔たりが大きい
今回の大統領選挙では、かつて文在寅氏が大統領選挙に挑んだ時よりも、世代間の政治的思想の隔たりがさらに大きくなっている実感がある。
前述の李在明氏の釜山遊説でも感じたことだが、集まった人々の多くは中年以上、特に明確に左派で李在明氏を熱狂的に支持する人たちは40代~60代に集中しているという印象だった。彼らには共通する特徴がある。李在明氏について否定したり、批判的なことを発言したりしようものなら、激しく否定し、感情的に口撃して相手への憎悪を見せるタイプが多い。こうした人たちと政治論議をするのは非常に厄介である。