またこの支持層は、李在明氏が苦労して政治家になった話を美談として評価したり、同じく左派の文在寅元大統領や、曹国(チョ・グク)氏がインテリでスマートさがあるのと比較して「親しみやすさがある」と表現する特徴もある。こうした支持層によって、李在明氏の人気は支えられている。

 一方、10~30代の韓国人からすれば彼らは親世代に当たる。若者たちはこの世代に対して、偏屈で偏向な政治思想にうんざりしたり、反感を持っているという雰囲気も感じられる。現にSNSなどでも「親の偏り過ぎた考えには辟易する」ので「李在明には投票しない」といった若者の発言も目にする。とはいえ、若者の間で右派の人気が高いとも言い難く、“偏向が過ぎると左派も右派も本質的には同じ”ということを若者たちは見抜いているのかもしれない。

若者に支持される中道派・李俊錫氏の台頭

 今回の選挙において注目されているのが、若者を中心に根強い人気を集めている中道派「改革新党」の党首である李俊錫氏の存在である。

 現在40歳である李俊錫氏は、30代で政党「国民の力」の党首となり、話題となった。年功序列が根強い韓国で30代という若さ、しかも政治家経験がない者が党首に就くのは異例だったが、当時、大統領候補として有力視されていた尹氏とタッグを組んだことでも注目を集め、一時は尹氏との関係も蜜月であった。しかし、政策の意見の対立などから尹氏との関係は決裂、修復しがたいものとなり、「国民の力」を追われる形で去ることとなった。その後、「改革新党」を新たに立ち上げ、昨年4月の国会議員総選挙でも躍進した。

 筆者の周囲でも有権者の10代、20代の若者は李俊錫氏推しが多く、中には「改革新党」の党員になったという大学生もいた。支持する理由を聞くと、李在明氏や金文洙氏と比較してもフレッシュな感じや、話術にスマートさが感じられること、政策についても具体的でわかりやすいといった点が挙げられている。

 李俊錫氏は、若者以外にも、中道派や無党派層の中高年からの支持が高まっている。とはいえ、まだまだ政治の手腕や経験は未知数な部分が大きいことから、今回の選挙は彼にとっては今後の大統領選挙への前哨戦と言えるものであり、どの程度まで得票を伸ばし支持層を広げるか注目していきたいところである。