エヴァはスイスで生まれ、コペンハーゲンで育ち、建築家としてニューヨークで5年、コペンハーゲンで7年、ロンドンで4年働き、その後、コペンハーゲンに戻ってきて、ビャルケ・インゲルス率いる建築事務所BIG(ビッグ)で10年働いた後、最近になって独立起業した。

 約25年間、そのキャリアを通じて、グローバルに第一線で活躍してきた女性建築家である。

 コペンハーゲンのカフェで待ち合わせに現れたエヴァは、建築家らしくセンスが良く、エレガントで美しかった。彼女が紡ぐ言葉や表情には、プロの建築家としての風格を感じさせてくれるものがある。それでいて、まったく圧がない。とても柔らかい雰囲気の素敵な女性だ。

 エヴァによれば、どんなスケールの建築プロジェクトも、イノベーションを起こすためには「出だし」が肝心である。

 最終段階になると、素材の変更といったような小さな決定しかできないが、初期段階では、場所の選択から既存の建物をどうするかといった点まで「大きな決定」ができるからだ。

 つまり、大きなイノベーションを起こせるのは「出だし」だけなのだ。

 また、エヴァは、最初にコンセプト(何をしたいか)を明確にすることが重要だと指摘する。

「最初に『本当に解決すべき問題は何か』を見極めて、その問題を解決するための『強いコンセプト』を打ち出さないといけない。それがクリアできないと、最後の最後までトラブルに見舞われ続けることになる」

 だが、「本当に解決すべき問題は何か」を見極めて、その問題を解決するための「良い解決策」を打ち出すのは、簡単なことではない。

 だからこそ、エヴァは「出だし」のプロセスを甘く見積もってはいけない、と強調する。

「くだらない会話」にも
イノベーションの原石が眠っている

 解決すべき本当の課題を突き止められたら、次にするのは、出せるだけのアイデアを出し切ることだ。ポイントは「リミットを外す」ことである。