自分のせいではないのなら、もっと努力する必要もなければ、アプローチを変える必要もありません。ただ今より少し運がよくなればいいだけです。運にさえ恵まれれば、自分はきっと成功できる、というわけです。
このように、統制の所在は自分の外にあると考えると、コントロール権を自ら手放し、自分の人生の出来事をどこか他人事のように眺めることになる。
一方で統制の所在が自分の中にあるなら、出来事をコントロールしているのは自分だと考えられます。
心理学者たちは、このような「出来事の責任の所在」という概念に興味を持ち、それがどこまで影響力を持つのか調査しました。
10回連続でコインが表のとき
次に裏が出る確率は?
つまり、出来事に対する責任をどのように感じれば、幸福や成功にもっとも近づけるのか、ということです。
とはいえ、心理学は統計学とは違うので、こういった心的態度を客観的な立場から正確に定量化できるわけではありません。実際のところ、私たち人間は、自分の人生で起こることをどれくらいコントロールできるのでしょうか?
運とコントロールの話をするなら、「ギャンブラーの誤謬」という概念に言及しないわけにはいきません。
ギャンブラーの誤謬とは、完全にランダムな事象であっても、そこには何らかの予測できるパターンがあるに違いないと思い込むことです。
ここで1つ質問です。
コイン投げで表が連続して10回出たとき、次に裏が出る確率はどれくらいだと思いますか?
正解は50パーセントです。そもそもどんな条件であっても、確率はつねに50パーセントです。
それでも私たち人間は、表が何回も続いたら、そろそろ裏が出てもいいころだ、次こそ裏だろうと感じてしまう。その結果、裏にお金を賭けるのです。
統計学の世界では昔から知られていることですが、数学的に計算した確率と、人間の脳が創造する物語が一致することはめったにありません。数学的な法則と人間の直感は違うということです。
たとえば、サイコロを振っていると、いずれ必ず「6」が出るはずだと感じるかもしれない――つまり、これだけ振っていればそろそろ出るだろうというわけです。