古代ギリシアの哲学者アリストテレスは、すでに2500年前から「悪意(いやがらせ)」とは、「他人の望みに対する妨害であり、それも自分が何かを得るためではなく、相手が何かを手に入れないためにそうすることなのである(*1)」と述べていました。しかもそれは、「自分に何かの足しになることを目的としていない(*2)」ともいわれています。
(*1、2)アリストテレス『弁論術』(戸塚七郎訳、岩波文庫、1992)163頁
つまり悪意とは、たとえ自分にとって損になることであっても、相手を苦しめることができるのであれば、それを厭わないというものです。
私たちは悪意を
どれくらい抱いているのか
怖いですね。私たちは、この悪意というものをどれくらい抱いているのでしょうか。
ダブリン大学の神経心理学の専門家であるジョーンズ准教授は『悪意の科学』という本の中で、次のような悪意の事例を列挙して行ったアンケート調査について紹介しています(*3)。興味深いので、あなたもそのような悪意を抱いたことがあるかどうかを考えてみてください。
・混み合った駐車場から車を出すとき、自分が停まっているスペースに車を入れようと待っている人がいたら、相手をもっと待たせるためにわざとゆっくり車を出す。
・特定の候補者を落選させるためなら、たとえ対立候補が好きではなく、自分や国に不利益をもたらすと思われても対立候補に投票する。
・家にいるほかの人を寒さで不快にさせるためなら、自分も寒い思いをしてもかまわない。
・自分が遅くまで残業すれば同僚も残業しなければならなくなるのであれば、あえて残業する。
・パートナーに腹が立ったら、自分も空腹になるのを覚悟の上で夕食を焦がす。
・たとえ今年の自分のボーナスが減るとしても、同僚が失敗するのを見たい。
・後ろに並んでいる人を待たせるためだけに、わざとゆっくり会計をする。
・特定の候補者を落選させるためなら、たとえ対立候補が好きではなく、自分や国に不利益をもたらすと思われても対立候補に投票する。
・家にいるほかの人を寒さで不快にさせるためなら、自分も寒い思いをしてもかまわない。
・自分が遅くまで残業すれば同僚も残業しなければならなくなるのであれば、あえて残業する。
・パートナーに腹が立ったら、自分も空腹になるのを覚悟の上で夕食を焦がす。
・たとえ今年の自分のボーナスが減るとしても、同僚が失敗するのを見たい。
・後ろに並んでいる人を待たせるためだけに、わざとゆっくり会計をする。
(*3)サイモン・マッカーシー=ジョーンズ『悪意の科学 意地悪な行動はなぜ進化し社会を動かしているのか?』(プレシ南日子訳、インターシフト、2023)。なお、本記事で列挙した悪意の数は、似たようなものを少し減らしてあります。