むしゃくしゃしたからといって
モノに当たっても効果がない

稲垣諭 著
このことはぜひ覚えておいてほしいのですが、むしゃくしゃした気持ちやイラつきなどを、その強さに比例した身体運動として表出すること、たとえば物を激しく投げつけたり、サンドバッグを殴ったりしても、その怒りは収まらず、むしろ増大することさえあります(*8)。
怒りを運動で発散することは一見、よさそうに思えますが、あまり効果がないようです。
むしろ重要なのは、その怒りを誰かに話して共有したり、瞑想したりすることで、とにかく心を落ち着かせることです。怒りや憎しみをつづかせないために大切なのは、前章で述べた余裕の力を回復させることだといってもいいでしょう。
ともかく、このように多くの先人が指摘しているように、私たち人間には悪意というものが芽生えやすいのは確かなようです。
(*8)Bushman B.J.,Does Venting Anger Feed or Extinguish the Flame? Catharsis, Rumination, Distraction, Anger, and Aggressive Responding, Personality and Social Psychology Bulletin, Volume 28, Issue 6, 2002, pp.724–731.