“ある力”とは、ずばり「想像力」です。キャンドラーは、こう考えました。
「薬用ドリンクとして売っていては、マーケットや顧客を限定してしまう。この素晴らしい飲み物は、もっと多くの人に楽しんでもらえるはずだ」
彼は、コカ・コーラを「薬」としてではなく、誰もが楽しめる「清涼飲料水」として売り出す、発想の転換をします。このたった一つの「想像力」のスイッチが、コカ・コーラを薬局の片隅から世界中のマーケットへ解き放ち、アトランタという一都市を大発展させるほどの巨大な富と雇用を生み出す起爆剤となったのです。
さて、ここでもうひとつクエスチョン。全世界で1億部超という屈指の売り上げ部数を誇る本をご存じでしょうか?
答えは、『Think and Grow Rich』(改題・新訳『巨富を築く思考法』)で、ナポレオン・ヒル博士が25年の歳月をかけて体系化した自己啓発書です。500人以上の成功者が財産を築いた秘密が記されています。ヒル博士が伝えたかった「想像力がいかにして富を生み出すか」は、現代の私たちにも鋭く突き刺さります。
人間が想像できることは実現できる
ヒル博士は想像力について、「あらゆる計画がつくり出される工房である」と明言しています。どんな願望も、「想像力」の助けを借りなければ具体的な形を持ちえず、行動へと結びつけられることもないと断言しているのです。
また、人類が科学技術を発展させた歴史こそ、「想像力」の偉大な証拠だと述べています。飛行機の発明や、電波での通信、宇宙の解析などは、どれも「人間が想像できることは実現できる」という法則が具現化したものです。
その「想像力」について、さらに二つの形があると説明しています。ひとつは「統合的想像力」で、もうひとつは「創造的想像力」です。
統合的想像力とは、「編集能力」と言い換えてもよいかもしれません。新しい概念やアイデアそのものを生み出す能力のことではなく、既存の知識や経験を組み合わせ、新しい計画やアイデアを生み出す能力のことです。この能力の基礎となるのは、経験や教育、観察です。
一方の創造的想像力は、言うなれば「ゼロイチ力」であり、天才的なひらめきを伴うものとして位置付けられています。いわば「直感」や「インスピレーション」を受け取る能力で、新しいアイデアの源になるのです。
この創造的想像力は意識がフル回転しているときに機能するもので、例えば、強い願望などによって心が刺激されると自動的に機能するといいます。さらに、創造的能力は使えば使うほど磨きがかかり、潜在的なアイデアに対して敏感になるというのです。
富を生む源泉は、いつだってアイデアです。 そして、そのアイデアに命を吹き込み、現実の富に変える魔法こそが「想像力」なのです。あなたの頭の中にも、〈まだ誰も気づいていないコカ・コーラ〉が眠っているかもしれません。