無能な上司は「なぜ、そう思うの？」と聞く。“有能な上司”は、どう聞いている？

2025年7月10日 6:50

「『なぜ、そう思うの？』は、絶対にNGです」
「なぜなぜ分析」をはじめに「なぜ？」という問いは“論理的に考える”ための「良い質問」だと考えられている。しかし実は「なぜ？」「どうして？」は、致命的な「解釈のズレ」を生み、噛み合わない会話＝「空中戦」を作り出してしまう元凶、「最悪の質問」なのだ。
「事実と解釈の違い。これに気づけていない人は、まだ確実に“曇りガラス”の中にいます」――。話題の新刊『「良い質問」を40年磨き続けた対話のプロがたどり着いた「なぜ」と聞かない質問術』では、世界・国内の各地で実践・観察を積み重ねてきた著者による「賢い質問の方法」＝事実質問術を紹介している。本書に掲載された衝撃の新事実の中から、今回は「ありがちなNG質問」について紹介する。（構成／ダイヤモンド社・榛村光哲）

Photo: Adobe Stock

「なぜそう思うの？」は良くない聞き方

みなさんは、部下に意見を求めるときに、どのように聞いているでしょうか。聞き方にも様々あると思いますが、ここで良くないのが、次のような聞き方です。

・「なぜ、そう思うの？」

これは、自分と相手との間でコミュニケーションギャップを生む可能性のある“良くない質問”です。今回はこれについて考えてみましょう。

「なぜ？」は相手を問い詰める

次のようなシーンを考えてみましょう。たとえばあなたが社内の重要な会議でプレゼンをしていたとします。会議の内容は、上司にとっては耳の痛い話も一部あるので、あなたはとても緊張して会議に臨んでいました。

そんな中で、上司が次のように聞いてきました。

・「一体なぜ、そう思うの？」

あなたは、どのように感じるでしょうか。

正直、急に「問い詰められた」ように感じてしまう人も多いのではないでしょうか。理由を直接に問われているに過ぎないのですが、実際の現場では、「詰問」っぽく感じてしまうと思います。「しっかりした受け答えをしないと、怒られそうだ……」という雰囲気がしますよね。

ただ逆に、上司の立場から考えてみましょう。上司からすると、「部下がどうしてこのように感じたのか」その理由を単純に聞きたいだけかもしれませんね。

しかし、実際に起きているのは、部下と上司との間の「コミュニケーションのズレ」です。上司からすると「良かれと思って」“なぜ”と聞いているつもりでも、部下は問い詰められたように感じてしまっては、信頼関係が損なわれてしまうリスクすらあります。

「力関係の差」があると「なぜ？」は最悪

こういった「なぜ質問」のことを、私は「詰問型のなぜ質問」と呼んでいます。形としては「なぜ」「どうして」という質問になっていますが、これは純粋な質問として作用せず、力関係の差を利用して相手にプレッシャーをかけていることと同義です。

とりわけ、質問する側とされる側の間に、力関係が存在する（＝対等でない、モチベーションに差がある）などの場合、たとえば上司と部下の場合などはそれが顕著です。このような「なぜ質問」を使ってしまうと、質問者は真の理由を突き止めたくて聞いているのに、回答者は思い込みや言い訳を言うという「会話のズレ」が起こります。

そして、これに気づかずに話を進めてしまったときに発生するのが「会話のねじれ」です。この聞く側と聞かれる側の間に生じる「ねじれ」こそがコミュニケーション不全の正体です。そして「なぜ質問」は、このねじれを引き起こす最も「たちの悪い」質問なのです。

こういった場合は、「いつ」「どこ」「だれ」などの、5W1H（ただしWhyとHowは除く）を使って、事実に絞って具体的に質問する「事実質問術」を使います。本書で紹介する「事実質問術」は、「なぜ」質問に解決策を提示するのです。

（本記事は『「良い質問」を40年磨き続けた対話のプロがたどり着いた「なぜ」と聞かない質問術』に関する書き下ろしです）

「なぜそう思うの？」は良くない聞き方

「なぜ？」は相手を問い詰める

「力関係の差」があると「なぜ？」は最悪

本書の内容