Android XRデバイスの参入で広がるイマーシブビデオ
このようにAppleは、今後の市場の拡大を見込んでAVP対応イマーシブビデオのラインアップを充実させてきており、熱気球や大自然の旅などのバーチャルトリップを提供するBoundlessシリーズ、野生動物に寄り添うドキュメンタリーのWild Lifeシリーズ、空撮を通してアイコニックな絶景を体験するElevatedシリーズ、冒険家やアスリートのリアルな挑戦を追ったAdventureシリーズなど、多彩なテーマで制作が進んでいる。
イマーシブビデオに注目しているのは、Appleだけではない。大阪・関西万博でAndroid XRを搭載したゴーグル製品のプロトタイプのライブデモを行っているサムスンも、今はマップやAIアシスタントのGeminiとの連携を中心に機能性をアピールしているが、普及にあたってのキーとなる要素の1つがイマーシブビデオにあることは、重々承知しているはずだ。

ライブデモを見た来場者は、ジェスチャーコントロールや、パススルー画面とCGの融合にいちいち驚いていた。これは逆にいえば、AVPの存在が一般にはほとんど知られていないことの証しでもある。
AppleはすでにAndroidデバイス向けのApple TVアプリを公開しているので、実際にAndroid XR製品が市販されるようになれば、それを通じて自社制作のイマーシブビデオの配信も始めるだろう。将来性があるとはいえ、まだ市場としては小さいため、Android XRデバイスの参入によってこの分野が注目されることは、Apple自体もある意味で歓迎しているものと思われる。
まだ見ぬApple Vision Glass(仮称、Appleが開発しているといわれるメガネ型デバイス)も含めて、かつてのスマートフォンの黎明期のような市場が、ここ数年で形成されていくことは間違いないだろう。
