クルマは、ホームに勝てるオーディオだって造れる

 三菱のフラッグシップSUV、「アウトランダー」。3代目アウトランダーは2021年に発売され、売れ行き好調だったにもかかわらず、たった3年でマイナーチェンジ。しかも、見た目はほとんど変わらないのに、中身は大きく変わったというのは試乗記にも書いたとおりだ。

 バッテリーを変え(PHEVモデル)、ガソリンタンクを削り……という話は、以前、開発者インタビューで詳しく紹介した。もう一つ、このときに大きく変わったのがサウンドシステムだ。3代目アウトランダーではBOSE製のサウンドシステムが搭載されていたが、2024年のマイナーチェンジの際にヤマハのサウンドシステムを新たに採用した。そのとき、ヤマハの音づくり職人「サウンドマイスター」の全面協力を得た、という話を聞いたことが、今回の取材につながったのだ。

アウトランダーPHEV3代目アウトランダーPHEV(広報写真)

 クルマの中で、少しでも良い音を聴きたい。

 アウトランダーのコンセプトである「威風堂々」を音で実現したい。

 三菱自動車の願いと、ヤマハの磨き抜かれた感性が合体してでき上がった、アウトランダーの最上級カーオーディオ。前々回前回は両社の熱い想いをたくさん伺った。その想いをどのように製品に落とし込んでいったのか。最終回は技術的な面について伺おう。

フェルディナント・ヤマグチ(以下、F):「オーディオを良い音で聴く」という観点からすると、クルマの中は最悪の環境ですよね。周囲を樹脂とガラスで囲まれ、ハンドルやらシートやらとさまざまな障害物がそそり立っている。しかも暑い。寒い。振動する。ホコリが舞う、と精密機械にとって劣悪な条件が重なっている。

ヤマハ 音楽事業本部 モビリティソリューション事業部 開発1部 サウンドデザイングループ 主事 サウンドマイスター 疋田智一さん(以下、疋):おっしゃる通り、クルマはオーディオにとって決して良い条件ではありません。これは間違いない。

 ですが、悪いことばかりではありません。実はクルマにもいい面がしっかりとあるんです。