秋:変わります。それはもう大きく変わる。例えば和室の畳の上にポンとスピーカーを置かれたら、もうどうしようもないことになってしまいます。
F:畳の上に直置きはイカンと。
秋:イカンです。そんなことをしたら、もう音が全然ダメになってしまいます。今回は実際にアウトランダーに疋田さんが座って調整しておられるので、フェルさんが座席に座れば全く同じ条件で全く同じ音を聴くことになるんです。ヤマハの狙った音そのものを聴けるということになる。
F:クルマであれば、サウンドマイスターが狙った音を、全く同じ環境で、同じ条件で聴くことができる。これは面白いですね。
あれ……?でも疋田さんはどこに座って聴いたんですか?運転席と助手席だと条件がガラッと変わりますよね。後部座席になればなおのこと。
運転席はスピーカーの真ん中ではないのに、なぜいい音で聴けるのか
疋:おっしゃる通り。乗る人の位置とか人数とかで、条件は大きく変わります。ですから設定モードを設けています。運転席に特化しますよとか、クルマ全体が最適化できるようになりますよとかモードで選べるようにしています。これをつくり込んだときは、各座席に計測機を立てて、我々もクルマの中を移動して聴いて回って。「これならいいね」とか「これダメだわ」とか言いながら。
F:運転席をピンポイントで100点にすることはできそうですが、全体最適というのはなかなか難しそうですね。全座席が100点というのはあり得ない。
疋:それはまあ、そうですね。
秋:厳密に言えばそうですね。運転席が100点のモードと全部の席が90点のモードとか、そんなような設定になっています。

F:オーディオの基本は、左右のスピーカーの中心で聴くことですよね。三角形の頂点で聴くのがベストというのがセオリーです。でもクルマだとそれは物理的に実現できない。その辺りはどのように対処されているのですか?運転席優先モードの際は、右のスピーカーを少しだけ遅く鳴らすとか……?そんなことはできないか(笑)。
疋:まさにそれです。それをやっています。タイムアライメントと言うのですが、いわゆる「遅延処理」という技術を使っています。