アベノミクスはハードヘッドか?
さて、アベノミクスはどういう位置づけになるのだろうか。
アベノミクスは、「3本の矢」ということで、リフレ派、反リフレ派、改革派のよい所どりをしているかのようだが、どんな薬にも副作用があること、そして悪い飲みあわせ(負の相互作用)があることを忘れてはなるまい(詳細は『日本経済の憂鬱』を参照)。薬を服用する順序とタイミング、それぞれの服用量などについて、入念な検討がなされなければならない。
世界が注目する社会実験にいどむ政策当局には、医者が患者の治療にあたるのとおなじく、時々刻々と変化する制御対象の特性にあわせて、制御装置の制御定数(パラメータ)を変化させ「適応制御」する匠の技が求められている。そのために政策当局は、省益システムから脱却し、経済界、そしてなんらかの利益団体を代弁する御用学者の言説に耳を貸さないほうがよい。アベノミクスがハードヘッドであり、また「ブラインダーの法則」(採択される政策は最悪のものである)の例外となりうるために。
次回は7月3日更新予定です。
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経済無策からポピュリズムへーー。
アベノミクスのねらいは、小泉構造改革との決別、そして国家資本主義の復活なのだ。
アベノミクスは官主導色が強いという意味でケインズ派的である一方、規制改革にも熱心なところは新古典派的でもある。その本性は「国家資本主義」にあり、個人主義や自由主義、民主主義という普遍的な価値を脅かす憲法改正への通過点かもしれない。
空前絶後の壮大な社会実験であるアベノミクスの是非を考えるうえで、“道案内役”を果たす1冊だ。