サブプライムローンにも警鐘
危機を予言し続ける目は未来へ

 ところで、原書『Irrational Exuberance』でITバブルに警告を発したシラーは、05年に刊行した同書第2版では、株式と住宅のバブルに関する分析を追加しました。ITバブル崩壊の一方で、グリーンスパン議長率いるFRB(米連邦準備制度理事会)が実施した金融緩和を背景に住宅ブームが発生し、住宅価格は右肩上がりで押し上げられていきました。03年以降になると、プライムローンのみならず、信用力の低い低所得者向けサブプライムローンの拡大が本格化。05年ごろになると住宅バブルの崩壊が懸念されるようになりました。ITバブル崩壊を予言したシラーは、今度は住宅ブームの終焉が米国経済に与える影響について警鐘を鳴らし始めたのです。

 正直なところ、非常に心配している。住宅市場の動向は、景気サイクルと非常に密接な連動性を示す。過去の例を見ると、中古住宅の改装投資を含む住宅投資額は必ずといっていいほど不況の前にピークを迎えていた。ちなみに、05年の民間住宅投資の水準(対GDP比)を凌ぐのは1950年だけだ。したがって、すでにピークアウトしたと見るのが妥当だろう。だとすれば、2年以内に、米国経済はリセッションに突入する可能性が高い。(『週刊ダイヤモンド』06年10月14日号)

 そして08年9月。リーマン・ブラザーズの経営破綻をきっかけに、超弩級の金融危機が世界を覆い尽くしたことは記憶に新しいところです。予言と警告を繰り返してきたシラーの目には、早い時期から荒涼とした風景の一端が見えていたに違いありません。


◇今回の書籍 33/100冊目
投機バブル 根拠なき熱狂』

なぜ暴騰と暴落は起こるのか?<br />ノーベル経済学賞受賞者による衝撃の書

暴騰と暴落のメカニズム!FRB議長グリーンスパンの名言を軸に、乱高下する株価の秘密を検証。米国株バブルに警鐘を鳴らし、全米に衝撃を与えた問題作。

ロバート・J・シラー 著
植草一秀 監訳
沢崎冬日 訳

定価(税込)2,520円

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