山崎亮×吉里裕也×馬場未織<br />これからの豊かな暮らし方について語ろう【後編】馬場未織(ばば・みおり)
1973年生まれ。日本女子大学大学院修了後、建築設計事務所に勤務。退社後ライターに転向し、建築雑誌やファッション誌などで執筆。私生活では南房総にて週末里山暮らしを実践し、2011年に建築家、農家、造園家らとともに里山活用のNPO法人南房総リパブリックを設立。目下、親子向けの自然体験教室「里山学校」(南房総市)、「洗足カフェ」(目黒区)、三芳つくるハウス(南房総市)を運営中。

馬場 ちゃんと生活している人って、カッコいいんですよね。なんでしょうね、あれは。農家の人って、本当にカッコいいんですよ。私はライターをやってますけど、田舎暮らしで何の足しにもなりませんからね(笑)。言葉は出なくても、車直せちゃうとか、家が修繕できちゃうとか、竹をカッカッて割って、暗渠の修繕をしちゃうとか、本当にカッコいいですよ。生活者のプロというか、一人で何も後ろ盾がなくても生きていける力を持っている人に憧れますね。

山崎 イギリスのジェントルマンが憧れるカッコいい生き方というのは、将来的にカントリーサイドで暮らすことみたいですね。日本でも白洲次郎なんかが、その影響を受けてましたけど、あれはイギリス人に聞くと、「生きていくのが厳しいから」だと。不便で厳しいところで生きていけるという自分を、みんなに見せたいからだと。

馬場 あ、でも見せたいんだ(笑)。

山崎 ロンドンに住んでいる人は、いろんなものに助けられながら、何もできなくても一応生きていける土地なんですよ。つまり、甘えて住んでいると。どんなにイキがっても、カントリーサイドっていうのは、そういう力がないと生きていけない場所だというのを、ロンドン市民はみんな知ってるんですね。「あそこでカッコよく生きているって、本当にすげぇよな」っていう認識を、みんなが共有しているらしいんですよ。

馬場 すごい。そうなんですね。

山崎 今の馬場さんの感覚にすごく近いんじゃないですか。自然の中で生きられる力を持っている人をカッコいいと思う感覚を、ロンドン市民がある程度の割合で共有しているというのは、なんか羨ましい国だなぁと思いますね。