山崎 だから、「孫の力」で集落に新しい関係性を結べるチャンスがあるんじゃないかと思うんですよ。これからも残ってもらいたいような集落では、孫がぜひとも戻って行くといいんじゃないかな。昭和20年まで、日本の総人口の8割が農村人口で、2割が都市人口だったんです。でも戦後、これが逆転したんですね。今、日本の総人口の8割が都市と呼ばれるところに住んでいて、2割が郡部と呼ばれるところに住んでいるんですよ。

馬場 そんなに違うんだ。

山崎 一方で今、都会に住んでいて、どうも違和感があるという人たちが増えています。もともと人口比率は農村80:都市20だったのに、ある時から都市80:農村20になったということは、真ん中の6割は、本来は郡部に住んでいたほうがいい生活なり、豊かな毎日を送れる人たちが、今はたまたま東京に住んでいるだけなのかもしれないわけです。

 この6割全員が田舎に帰る必要はないですけれども、そのうちの2割、3割くらいの人たちが、本来、郡部で住んだほうが生き生きと住める可能性を持っているかもしれないんですね。そういう人たち「孫の力」を十分発揮して、集落で希望の星になるという生き方が可能なのかもしれないと思うんですよ。

馬場 面白いですね! 確かに、帰っていくタイミングというのがあると思います。この間、吉里さんと対談したんですけど(https://diamond.jp/articles/-/50303)、自分が今、東京に住んでいるのは永住ではなく、通過点であるっていう話をしましたね。

吉里 そうですね。山崎さんもそうだと思いますし、僕もそうなのですが、東京は地元じゃないんですよね。僕は20歳まで、20回くらい引越ししているんですよ。5年くらいのスパンでずっと変わっているんです。

 それはある意味、寂しい部分もあるけど、あちこちに地元感があるともいえる、すごい中途半端な状況なんですよね。僕は今、東京に住んでいますが、その一方で、地方にもいくつか「地元」といえるところもある。そんなとき、周りでも地方に移住していく人がすごく増えていて、そうすると「なんで東京に住んでいるのか?」というのは真剣に考えざるを得ないテーマなんですね。

 20代、30代、40代、50代と、各フェーズによって違うと思うんですけど、若いときは何かを得るために東京にいても、その先、無条件に東京に限定する必要はないだろうし、人によって住む場所を変えてもいいんじゃないかと。これからは東京を通過点にするという発想がもっと出てくると思うんですよね。

(イベント終了)

 最後に:三人三様の立場から田舎暮らしについて話すことのできる貴重な機会をいただきました。今ある日本の里山環境をすべて残せる未来はない、という現実的な未来を見据えながら、田舎暮らしの価値をどう継承し日本の田舎をどう健やかに縮退させていくべきか、そして自分の暮らしの中にどのような形で「もうひとつの生活」としての田舎暮らしを織り込んでいくかということを、鳥の目虫の目で考えを進めていければと思いました。

 山崎さんの「がんばっている人がいない田舎は、なくなっていくのかもしれないですね」というシビアな考え、吉里さんの「都会や田舎をある意味フラットに見られる価値観をもって自分の生活の場所を選べる人が増えてくるのではないか」というビジョンなどを伺い、大いに刺激を受けました。

 ご参加いただいたみなさま、どうもありがとうございました!(馬場未織)

※この記事は2014年3月11日に代官山 蔦屋書店(旅行フロア)にて行われた「『週末は田舎暮らし』刊行記念トークイベント 馬場未織&山崎亮&吉里裕也」をまとめたものです。