今こそ、これからの住む場所や暮らし方について考えよう。都市はもはや通過点に過ぎない時代だ。『週末は田舎暮らし』の著者・馬場未織さんと、コミュニティデザイナーの山崎亮さん、東京R不動産の吉里裕也さんが、これからの豊かな暮らし方について語り合ったトークイベントの後編。(2014/3/11代官山 蔦屋書店トークイベントより)

【※「前編」はこちらからお読みください】

里山暮らしは子育てと同じ!?
Iターンに慣れている女性が強い

吉里 僕は今回、馬場さんの『週末は田舎暮らし』を相当ちゃんと読んだんだけど、正直な感想としては、「よく頑張るなぁ」という気持ちが強いですよ。喜びや豊かさもすごくわかるけど、やっぱり二地域居住の脱落者としては、大変な部分に目がいきがちなんですよね。

山崎 脱落者としてはね(笑)。

馬場 そうかぁ。その辺をどうやって伝えればいいかというのは、かなり悩んだんですよね。これは本に書いてないんだけど、大変さと喜びという意味では、子育てと同じ感じなんですよ。子どもって、いるだけですごい手がかかるし、夜、出掛けられないし、お腹空いてない時でも食事つくらなきゃいけないし、つくった食事は「まずい」って食べないし、本当に腹が立つんですよ(笑)。

 でも、すっごくかわいくて、放棄できないんですよね。産んだら最後、ずっと育てていく。その育てる過程の苦労も振り返れば喜びになっていくもので、そういう時間の積み重ね方は、二地域居住の暮らしと似ているんじゃないかな。あくまで私の関わり方の実感ですけど。大変さばかりに意識を向けるより、やってみればわかる喜びみたいなものを伝えたいんですけどね。

山崎 すごい! これからの世の中は女性ですね。

馬場 なんだ、それは(笑)。

山崎亮(やまざき・りょう) studio-L代表。京都造形芸術大学教授。慶応義塾大学特別招聘教授。1973年愛知県生まれ。大阪府立大学大学院および東京大学大学院修了。博士(工学)。建築・ランドスケープ設計事務所を経て、2005年にstudio-Lを設立。地域の課題を地域に住む人たちが解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりのワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、市民参加型のパークマネジメントなどに関するプロジェクトが多い。著書に『コミュニティデザイン』など多数。

山崎 いや、事あるごとにそう思うんですよね。コミュニティデザイナーも絶対に女性が向いていますからね。いつも言うんですけど、僕よりうちのスタッフの女性たちのほうがずっとうまいんですよ。集落に行っても地元の人とすぐ馴染めるのは女性ですよ。以前、60歳くらいのあるお母さんから、「女性はみんな、Iターンだから」って言われたんですけど、確かにそうだと。みんな、Iターンじゃないかと。

馬場 確かにそうですよね。

山崎 子育てもそうだし、嫁に来るというのもそうだし、女性の方が適応能力があるんですよ。男どもは本当にダメで(笑)。僕らは22歳くらいまで「時間に追われない国」に住んでいて、そこから30年とか40年、「時間に追われる国」で過ごすんですが、定年後、「時間に追われない国」にまた戻ることになっても、戻れないみたいなんですね。

「早くやってくれ」「次の予定は?」ってよく言うんですよ。男の人たちの大半は、追われる国での生活が忘れられないんで、看護師さんとかにも「10時じゃないか」「早くしてくれ。俺の検査のほうが、あの人より先だったじゃないか」とか言うんですよ。早く検査したって、その後やることはないんですよ(笑)。

 そういうことになっている時のおばちゃんたちは、ものすごいんです。「元気~?」みたいなことでつながって、他愛もない話をずっとしているんですよ。検査の時間も近くの人とすぐ友達になるから関係ないんです。この感覚って全員Iターンだし、逃れられないところで、きちんと折り合いをつけて生きている感じですよね。

 ワークショップでも、お父さんたちは「もう時間が過ぎてるじゃないか!」「いつまで待たせるんだ!」と怒り出す人がいるんです。でも、お母さんたちは「別に、ここは仕事の会議じゃないしね」って言っている。それって、どっちがその地域の中で生きていく時にエリートなのかといったら、完全に女性なんですよ。毎回、僕らは打ちのめされているんです。そういうことが生活する上で、必ず必要な力なんですよ。