連載第1回では、「どこでも腰痛体操」によって、腰痛を根本的に治療することが可能であると申し上げました。ただし、そのためには「腰痛」および「どこでも腰痛体操」についての正しい知識が必要となります。今回から3回にわたって、患者さんから多く寄せられるご質問をピックアップし、Q&Aの形でお答えしたいと思います。
Q 腰痛はなぜ起こるのですか?
お茶の水整形外科機能リハビリテーションクリニック院長。医師、医学博士、米国公認足装具士、日本整形外科学会専門医、日本リハビリテーション医学会専門医、日本リウマチ学会専門医。1994年に日本医科大学卒業後、千葉大学大学院にて2004年国際腰椎学会日本支部賞、2005年国際腰椎学会・学会賞を受賞。2008年王立パース病院ベットブルック脊椎ユニットに留学を経て、2010年にお茶の水整形外科クリニックを開院。
訳書に『自分で治せる! 腰痛改善マニュアル』など。最近ではダチョウ倶楽部の肥後克広氏を被験者とし銅冶氏が監修を務めた『あきらめない腰痛』が好評を博している。
A 腰痛は、腰椎の椎間板や椎間関節、仙腸関節、筋肉などさまざまな組織が原因になって起こると言われていますが、実はまだよくわかっていないのです。骨折や腫瘍などの原因がはっきりしている腰痛は少数で、原因がわからない腰痛は「非特異的腰痛」と呼ばれ、腰痛全体の85%にも及ぶと言われています。
しかし、腰痛になってしまう要因としては、姿勢と動作が重要になります。一般的には猫背の姿勢が腰痛を引き起こす元になることが多く、荷物運びやくしゃみなどの前かがみ動作は、ぎっくり腰のきっかけになります。逆に腰を反らしすぎる姿勢も腰痛の要因になります。つまり極端な姿勢や動作が腰痛の要因になるのです。
Q 筋肉を鍛えると
腰痛にかかりにくくなりますか?
A よく「腰痛になるのは腹筋や背筋が弱いからで、筋肉を鍛えれば腰痛にならない」と言われますが、その説に根拠はありません。筋肉隆々のプロスポーツ選手でも、腰痛で引退してしまうというのはよく聞く話ですし、筋力トレーニングと無縁の人でも、腰痛なく暮らしている人はたくさんいます。
実際に高い強度の筋トレと低い強度の筋トレを比べた研究では、高い強度の筋トレのほうが筋力は増強されましたが、腰痛の改善には差がなかったという結果が出ています。
腹筋運動は腰を前に曲げる運動なので「前屈改善タイプ」の人が腹筋運動をやりすぎるとかえって腰痛を悪化させることがあるので注意が必要です。腰痛を改善させる目的で筋肉を鍛える必要はありません。