――仕上がりに不安を感じられたわけですね。

 一方で、NHKの経済部を総動員して取材している気合いもよくわかりました。製作発表会の時、チーフディレクターに「脚本を読んで怒ってるでしょう」と言われたんですよ。「でも、僕らディレクター3人は、単行本をボロボロになるまで読んで、迷うといつも原作に帰ってきてるんです。いくら変えようと、スピリッツは絶対残しますから」と。

「2000年代のデビューは必然」と真山仁が明かす<br />作家人生の始まりや『ハゲタカ』ドラマ化の裏話「『ハゲタカ』のドラマの第1話試写サンプルを観た時、本当に感動しました」(真山さん)

 その後、第1話の試写サンプルが送られてきて、それを観た時、本当に感動しました。確かに匂いは一緒。それでいてまったく別の、新しい世界観が出ている。残り5話もドラマとして面白かったです。

 鷲津の配役については、原作の年齢に近い俳優のキャスティングができなかったそうです。大森南朋さんに決まるときに、鷲津を若く作り直してもいいかと言われて、どうぞご自由にということで、ああいう形になりましたけれど。だから原作ファンには、全然、鷲津じゃないって言われましたよ。

 ――原作の鷲津は、一見風采の上がらない「地味男」ですもんね。

真山 面白いなと思ったのは、撮影の間に、大森さんにだんだん風格が出てきたことです。2〜3歳年を取った感じでね。彼、ドラマの時は原作を読んでなかったそうです。映画のクランクアップ後に対談した時に、「自分が演じて作った鷲津と、原作の鷲津があれほど違うことに、怒ってらっしゃるでしょう」って恐縮していたけれど、その時彼には、「いや、だんだん原作の鷲津に近づいていったよね」と言いました。それは本当にそう思ったんです。

『ハゲタカ』シリーズは
自分が死ぬまで書き続ける

――『ハゲタカ』シリーズを書き続けているのは、ドラマがヒットした影響もありますか?

真山 いえ、最初からこのシリーズは死ぬまで書こうと思っていました。『ハゲタカ』シリーズで描きたかったのは、悪い奴同士で潰し合いをやって、転んでもただで起きない連中が、むくむくと起き上がってくるという痛快さ。その中に社会風刺が入ればいいなと。

 ――『ハゲタカ』シリーズ第3弾となる『レッドゾーン』では、『ベイジン』につづき、再び中国を取り上げています。まだ、書き足りなかった?

真山 そういうわけではありません。『ハゲタカ』シリーズを構想する際は、いかに読者を良い意味で裏切れるかだと思っています。端的に読者の方には、「鷲津は次は、どこを買うのか」という期待があるようです。まずは、その部分から驚いて戴きたい。『レッドゾーン』(講談社、現講談社文庫)では、「鷲津が」ではなく、「中国の国家ファンドが日本最大の自動車メーカーを買おうとしている」という設定を考えたんです。