口べたガチ男も、そして、皆さんも、そう聞きたくなるかもしれません。

 安心してください。そういうときのコツも、あります。

 簡単です。「なんでもいいから、とにかく、声を出す」です。

 プレゼンの場や会議というのは、緊張した場面です。一度「沈黙の罠」にはまってしまうと内容以前に、声を出すこと自体が、高いハードルになる。そう感じませんか?

 若い頃の僕は、そう強く感じていました。

 恐れや恥ずかしさや躊躇。こんなことを言ったらバカにされやしないか、これは正解とはほど遠い、相手はどんな答えを欲しているのだろう? そんなことばかり頭の中をグルグル回り、発言ができませんでした。

 それは、実感としては内容うんぬんよりも、ノドの奥の辺りに何かがつっかえて、そこに通路が開かずに、声が出ない、という感覚として立ち現れました。

 こういうときは、内容は二の次で、声を出すことに集中してください。

「そうですね」でも「分かります」でも、なんでもいいんです。

スポーツ選手がウォーミングアップをするのと一緒です。いきなり体を動かそうとしてもうまく動かないように、急に声を出そうとしても、そこにまずハードルができてしまいます。

 2004年、カンヌ国際広告祭(現・カンヌライオンズ)の審査会、私は若い頃の「声が出せない緊張感」を実感として思い出しました。

 世界じゅうからやって来た強者22名でのディスカッション。会議での発言のスキルも実績も、国に戻れば口べたガチ男とはほど遠い人たちが集まっているはずなのに、4~5名の人はディスカッション中、一度も声を発することがありませんでした。