英語力の問題もありますが、それよりは、そんな強者たちでさえ、“沈黙の罠”にはまってしまったのだと思います。僕自身、「英語でまとまった意見を言おう」とすると、なかなか声を発することができませんでした。

 僕は応援したい日本のテレビCMがあったので、その作品が俎上に上がったときにどう発言しようかと悩んでいました。それまで発言できていなかった(英語で声が出せていなかった)僕は、これは「声を出す練習」をする必要があると考えました。

 そこで、たいした発言じゃないのですが、「僕も賛成だね」「それはいいと思うよ」「とにかく面白いよね」などという、ディスカッションへの影響力はほとんどないような発言を「(英語で)声を出す練習のため」に何度か行いました。

 結果的に、これは役に立ちました。応援したい日本の作品の順番が来たとき、多くの聞き手が賛同してくれる効果的な発言ができたのです。隣にいたドイツ人にも「君はそれまであまり発言してなかったけど、あのスピーチはエフェクティブ(効果的)だったね」と言ってもらえました。

 審査会のディスカッションでは、饒舌に語りまくる人が数人いました。100本以上の作品についてディスカッションしなければならないので、ちょっと気を抜いていると発言もできないままディスカッションは終了となり、挙手に移ってしまいます。

 そんな中で、なんとか効果的な発言ができたのは、その前に「声を出す練習」をしたからだと思います。

 それは、皆さんが担当するプレゼンの場でも、社内会議の場でも同じです。多少なりとも緊張を強いられる場面では、まず「声を出す」「声を出し続ける」が、とても役に立ちます。

「沈黙の罠」に陥らないように、明日の会議から、何か声に出してみましょう。