業界細分化と競争優位について

 7章は、業界細分化と競争優位について書かれています。一部を引用します。

業界は均一ではない。業界内のセグメントも業界と同じように競争構造を持っており、5つの競争要因の力関係はセグメントごとに異なる」(『競争優位の戦略』283ページ)というのです。

 極端な言い方ですが、「業界を細分化したあとの状態」を「業界」と読み替えて、初めて『競争優位の戦略』が実践の書になるのです。

 たとえば、本書の重要概念である「5つの競争要因分析」を、「アパレル業界」という大まかな業界で分析しても、有益な示唆はほとんど得られません。

 制服を作っている業界に限って考える場合も、学生服と工場の作業服、鉄道や航空の接客用作業服、警察、消防の制服では、まったく違う結果になります。

業界セグメントを理解する(漁場を定める)

 業界セグメントとは、その業界の魅力度を探り、事業戦略を策定するために用います。業界セグメントは、マーケティングの市場セグメントと親戚関係にあります。市場セグメントは、マーケティングに焦点を当てたものです。

 これに対して、業界セグメントはマーケティングだけでなく、バリューチェーンやコスト構造にも焦点を当てる、もっと広範な概念です。

 ここでのコスト構造とは、製造コスト関連だけではなく、提案、ソリューション、アフターサービス関連のコスト構造も分析対象となります。

 なお、業界セグメントは、筆者の経営塾で使う目次案でいうところの「魚群探知機」に相当します。

 ここを理解していないと、効果を伴う戦略立案はできません。