基本的なことが、実はできていない
六つの例を挙げました。いずれも、部下は一生懸命に仕事をしていたのです。ところが、上司からは芳しい評価を得ることができなかった。その理由を六つ掲げました。
1.何のために資料をまとめるのか、「目的」の共有がない。
2.どんな資料をまとめるのか、「アウトプットイメージ」を共有していない。
3.どうやって資料を作るのか、具体的な「手順」が共有できていない。
4.それぞれの仕事で、どういう状態であれば大丈夫なのかが共有されていない。
5.仕事に必要な情報を漏れなく把握できていない。
6.手順やルールには、なぜそうするのか「ワケ」があるのに、勝手に判断してしまう。
ご覧になって、どんな印象をお持ちになられたでしょうか。こんなことは仕事の基本、自分たちの会社にはまず起こらない。そんなふうに言えるリーダーは、そうそういないのではないでしょうか。
実際には、こういうことがオフィスではたくさん起きている現実があると思うのです。そして、仕事のやり直し、作り直しは大きなロスをもたらしています。生産性を大きく下げ、スピードを阻害します。しかも、社員はやる気を削がれてしまう。モチベーションは上がらない。
だからこそ、こうした状況を生み出さないために、絶対に必要なことがあると私は思っています。私たちは「実は基本的なことができていない」という認識を持っておかなければいけないということです。
そこでスタートさせたのが、仕事の質を向上させるために、トヨタが新たに取り入れた考え方でした。この取り組みは、工場の現場から始まり、現在ではスタッフ部門まで全社で進めています。
管理者になる前も、管理者になってからも、私がずっと感じていたのは、一生懸命やっているのに、結果で文句を言われてしまう理不尽さが、会社ではあまりに多いということでした。だから、それを起こさせないための取り組み、と言ってもいいと思います。
そして、この取り組みを、トヨタ社内では「自工程完結」という名称で呼んでいます。どうしてこの名前なのか、詳しくは後に語ります。そして海外ではそのままローマ字で「Ji Kotei-Kanketsu」もしくは略して「JKK」と呼ばれています。