「社会保険料ってなんでこんなに高いの?」
「安くできる方法ってないの?」
「どんな時に、どんな給付がもらえるの?」
「細かい話はいいから、重要なことだけ知りたい!」


そんな社会保険にまつわる素朴な疑問や不満を、ストーリー形式で解決していく本連載。

第8回は、「入社日・退職日」と社会保険料の関係について、さくっとお伝えしていきます。

今回は、転職を考えている人が知っておいたほうがよい知識でもあります。

佐藤さん:こんにちは、松島先生。

松島先生:こんにちは。あら、今日も田中社長がご一緒ですか。

田中社長:今日は、社会保険料を安くする方法を教えていただけるそうで。

松島先生:いや、ムダな保険料を払わないという話で、そんな劇的に安くはならないですよ。それは先日もお話ししたでしょ!

田中社長:そ、そうは言ってもねぇ……。

松島先生:まあ、せっかく田中社長にいらしていただいたので、ここからは、人の雇い方や働いてもらう時間、形などでムダな保険料を払わないようにする方法の話をします。

田中社長:ぜひとも、お願いします!

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(前回までの記事はこちらからどうぞ)

第1回 社会保険料を「払い損」しないための知識:民間の生命保険と社会保険はどう違う?
第2回 給与明細の「社会保険料」の額って高過ぎじゃない?と思ったら読む記事
第3回 手取りが減った!と思ったら「この表」を見よう
第4回 6月に残業する人が「損」する理由
第5回 年収726万円以上の人の「特権」:ボーナスと社会保険料の関係
第6回 「介護離職」を救う助成金を見逃すな!
第7回 7月昇給の会社は「アタマがいい」理由:昇給と社会保険料の関係
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「入社日は月初」「退職日は月末前日」に

松島先生:まずは健康保険と厚生年金の基本から。まず、人を雇うときは入社日は月初にして、社員が辞めるときは、退職日は月末の前日にするのが鉄則です。

田中社長:え?月初の入社はともかく、月末前日の退職とはずいぶん中途半端な。

松島先生:これは、社会保険の資格取得日と資格喪失日の決まりに理由があります。

 社会保険の被保険者になった日を「資格取得日」といいます。一般的には、会社に入社した日が資格取得日です。反対に、会社を辞めて被保険者でなくなった日を「資格喪失日」といいます。

 ところで、社会保険の資格取得日は、会社に「使用されるようになった日」ですが、資格喪失日のほうは「使用されなくなった日の翌日」というのが決まりです。

 そして、社会保険料の徴収は「資格取得日の属する月」から始まりますが、終わりは「資格喪失日の属する月の前月」となります。さらに、社会保険料は月単位で徴収するのがルールで、日割り計算はしません。ちなみに、社会保険料は「翌月徴収・翌月納付」が原則です。

 言葉で説明されてもよくわからないと思いますので、まずは下の表をご覧ください。

会社を辞める人は
自分の退職日に気を付けておこう

松島先生:たとえば田中社長がこれを知らずに、新入社員を月末入社にしようとした場合に、佐藤さんが「明らかにソンですよ」と忠告してあげるのは、間違いでもなければ、まずい提案でもありません。

佐藤さん:それもそうですし、働く側の立場からしても、転職するときにこれを知っておかなかったら、知らない間に保険料でソンすることになるじゃないですか!

松島先生:そうですね。雇われる立場からすれば、こういうことを知っておかないと、小さなところでソンをすることにもなります。で、この決まりから、仮に3月31日に退職した場合の社会保険料を考えてみましょう。資格喪失日は「使用されなくなった日の翌日」ですから、4月1日で、社会保険料は3月分までかかります。でも、退職日を1日早くして3月30日にすると、保険料は2月分まで、ということになるのです。

田中社長:1日しか変わらないのに、まるまる1ヵ月分の保険料をとられるのはたまらんなあ。これはたしかに、払わないで済ませたい保険料だ。

松島先生:最悪なのは、月末入社の月末退職です。たとえ月末の1日でも、「資格取得日」になっていれば社会保険料の徴収が始まります。月末入社の月末退職は、月初入社の月末前日退職に比べると2日の違いで2ヵ月分、社会保険料のソンです。

田中社長:1日ずつの在籍で、まるまる1か月分の保険料をとられるのが2回もあるんじゃ、2倍のソンだ!

松島先生本人の給与からも控除されるわけですから、4倍のソンですよ。ちなみに、社会保険料の徴収は、当月分の保険料を翌月支給の給与から控除することになってます。

(次回に続く)