早期退職に社員の応募が殺到しているファミリーマート。強まる伊藤忠商事の支配に社員の厭世観は広がっている早期退職に社員の応募が殺到しているファミリーマート。強まる伊藤忠商事の支配に社員の厭世観は広がっている(写真と本文は関係ありません) Photo:Diamond

コンビニエンスストア大手ファミリーマートの早期退職に応募が殺到している。当初は800人の枠だったが、想定以上の“人気”ぶりに本社は募集期間を当初の2月10日~21日から前倒し、2月3日~7日と期間も短縮した。社員の自由意志による募集のはずが、内部資料では社員を「応募勧奨」や「慰留」など4グループに分類していることも判明。伊藤忠商事出身社員への優遇も目立ち、社員の間で厭世観が広がっている。(フリージャーナリスト 赤石晋一郎)

社員に早期退職応募を決心させた
ファミマ・澤田社長の年頭挨拶の言葉

 1月6日の朝。仕事初めのこの日、コンビニエンスストア大手ファミリーマートの支社(ディストリクト)は騒然とした雰囲気に包まれていた。社員たちの視線の先にあるのはテレビ会議用の大型ビジョン。映像はファミマ本社の大会議室につながり、年頭挨拶をする澤田貴司社長の姿が映し出されていた。

「会社があなたに何をしてくれるのかではなく、あなたが会社に何をできるか考えてほしい」――。

 澤田社長はこう社員に問いかけた。力強く語られたその言葉は、かえって社員たちの動揺を誘ったという。あるファミマ社員は振り返る。

「社長は『会社のために辞めろ』と言っているんだと誰しも思いました。そして、この会社に未来はないという声が広がったのです。早期退職に応募しようか迷っていた多くの社員が、社長のこの声で応募を決心しました」

 社員に動揺が広がったことには訳がある。きっかけはファミマが2019年11月に発表した人員削減計画だった。本部社員の約1割に当たる800人の希望退職募集を社内外に告知し、リストラに着手したのだ。

 ここに一束の資料がある。管理職社員の間で通称、“リストラマニュアル(以下・リストラ資料)”と呼ばれている代物だ。

 ファミマのリストラ計画の対象となるのは、勤続年数3年以上で、現場社員は40歳以上、本部社員は45歳以上が条件だ。該当する社員は約3000人にも及ぶ。対象となる社員は、800人という枠の早期退職に応募すれば、最高で2000万円の早期退職金と、再就職支援が受けられるという。

 対象社員への面談は19年末から始まった。一見、社員の自由意志を尊重した希望制の早期退職制度に見える。ところが、リストラ資料によれば、実は社員は4つのグループに階層分けされ、リストラの優先順位がつけられていた。