死後の手続き お金の準備#12Photo:kieferpix/gettyimages

きょうだい、伴侶がいない“おひとりさま“。死後の手続きは誰に託せばよいのだろうか。そんな不安を感じる“おひとりさま”の強い味方が「後見人」だ。裁判所が選ぶ後見人と自分で自由に選べる後見人のどちらを選択すべきなのか。特集『死後の手続き お金の準備』(全16回)の#12では、後見人選びのポイントを押さえる。(ダイヤモンド編集部 羽富宏文)

おひとりさまの財産は誰に託す?後見人選びの肝
方法は二つ、自分で選ぶ?裁判所に任せる?

 きょうだい、パートナーがいない“おひとりさま”の自分が、認知症になってしまったら――。財産管理、死後の手続きはどうすればよいのか?

 國學院大學法学部教授で、弁護士として自らも後見人を務める佐藤彰一氏は、“おひとりさま”の悲惨な現場に立ち会ってきた。

 中でも、佐藤氏が成年後見人を務めた、40代男性のケースは悲痛だ。

 両親は既に他界していたため、男性は病気を患っている妹を一人で介護していた。妹を介護する中で、一人で面倒を見ることがつらくなってきた男性は役所に相談に訪れるようになっていた。その最中に自らが若年性認知症と診断されてしまったのである。

「症状の進行からか、男性の家はごみ屋敷になっていました。妹の介護のために辞めた仕事の退職金もなくなり、債務の返済も滞っていました」(佐藤氏)

 男性から相談を受けていた役所からの申し立てによって、佐藤氏は男性の成年後見人となり、まず施設への入居を手配し自宅を処分したという。

 このように成年後見制度とは、認知症患者など判断能力が十分でない人が不利益を被らないよう、成年後見人が預貯金の管理や日常生活のさまざまな契約行為などを本人に代わって行い、個人の権利を守るものだ。

 成年後見制度は法定後見制度と任意後見制度の二つに大別される。それぞれにメリットとデメリットがある。実際に使うならば、どちらを選ぶのが“お得で安心”なのだろうか。