生前贈与#10Photo:PIXTA

遺産の分け方を巡り近親者でもめる「争族」。「わが家は皆仲がいいから大丈夫」。しかし、いざ相続の場面では激しくやり合うケースが多い。特集『生前贈与 駆け込み相続術』(全19回)の#10では、そんな争族を回避するための生前贈与のテクニックを紹介する。(ダイヤモンド編集部編集委員 名古屋和希)

「週刊ダイヤモンド」2021年12月18日号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

「争族」は1日40件発生
生前贈与で意思を示す

 争族はいまや人ごとではない。まずは下図を見てほしい。家庭裁判所で争われる遺産分割件数は右肩上がりで増加し、足元では年間約1万5000件に達する。単純計算で1日に約40件も発生しているのだ。

 実はこうした「骨肉の争い」を防ぐために生前贈与は活用できる。そもそも贈与はタイミングや相手を自由に選んで実行できるという大きな特徴があるからだ。

 この特徴を生かせば、相続トラブルの芽を前もって摘むことができる。

 会社を経営する父親が、事業を継ぐ意思のない長男の代わりに次男に継承するケースを考えてみよう。

 父親が生前に自宅兼オフィスを次男に贈与しておけば、次男は父親の死後も事業の継続に欠かせないオフィスを確保できる。

 しかし、仮に父親の遺産を法定相続分通りに分けることになれば、オフィス兼自宅を後継者の次男に渡せなくなる事態が起きかねない。

 被相続人の生前の明確な意思を反映させやすいのが贈与なのだ。

 贈与が生かせる場面はほかにもある。では、義理の親を介護した嫁を巻き込んで争族が泥沼化するようなケースを防ぐにはどうすべきか。