アルコール離れが止まらないなか、ウイスキー需要の伸びが顕著だ。ウイスキー最大手のサントリーの今年1~4月のウイスキー出荷数量は、前年同期比で31%も増加している。

 アルコール飲料の主役であるビール類は今年になって一度も出荷量で前年同期比プラスになっていない。今春の天候不順がビール離れに拍車を掛けたわけだが、同じ状況下でのウイスキーの快調ぶりには目を見張るものがある。

 ウイスキー好調の背景は、女優の小雪のCMなどでサントリーが仕掛け、昨年火がついたハイボール(ウイスキーのソーダ割り)のブームにほかならない。

 と言うよりも、ハイボールが「ブーム」から「定番化」に昇華したことがウイスキー需要を増加させた背景である。

サントリーのウイスキー絶好調!<br />醒めぬハイボール人気の好循環あっという間にコンビニの定番商品になった缶入りハイボール。ウイスキーへの「入り口」の役割も果たしている。

 実際、ハイボールに最も使用されるサントリーの「角瓶」の今年1~4月の出荷数量は前年同期比で77%増とハイペースの伸びを記録している。

 ハイボールを扱う飲食店数も2年前には約1万店だったが、昨年末には6万店に。さらに今年の4月末時点では8万店にまで増加している。国内の飲食店数は30万店弱なので、その浸透度、普及のスピードは驚異的だ。最近では飲食店経営者からサントリーのお客様センターへ、「ハイボールを扱いたい」という電話がかかってくるほどで、“営業マンいらず”の状況だという。

 ハイボールを盛り上げているのが、サントリーのみならず最近ビール各社も参戦した缶入りハイボール飲料の発売だ。あっという間にコンビニエンスストアの棚を確保し、飲食店同様にチューハイの市場を奪っている。

 もちろん、角瓶だけでウイスキー需要拡大を担っているわけではない。サントリーでは「山崎」「響」「白州」といったハイエンド商品の出荷量も今年になって前年同期比で2~4割増えていることも見逃せない。ハイボールを入り口として、ウイスキーに新規ユーザーが付いたり、かつて愛飲していたユーザーが戻ってきたりしているというのだ。

 もっとも、ウイスキー市場(出荷量)は20年前の1980年は34万キロリットル。それが2009年は8.2万キロリットルとなるまで縮小していて、それが上向きかけた程度。存在感が増し、伸びているとはいえ、ハイボールの消費量もチューハイの20分の1程度しかない。ウイスキーの快調ぶりは“局所的なヒット”とも言えるが、逆にそれだけ需要拡大の余地があるとも言える。

 サントリーでは、6月の父の日のプレンゼント需要を掘り起こそうと、ウイスキーにソーダやグラスを組み合わせたセットなどを用意しているが、思惑どおりとなるか。普及、そして定番化に成功した次のステップとして、消費喚起のマーケティング力が問われることとなりそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木豪)