
熊野英生
第51回
野田首相が社会保障と税の一体改革素案を決定したが、法案可決へのハードルは高い。しかし、赤字を拡大する年金などの社会保障基金を見ると、待ったなしの状況が浮かび上がる。今まさに「第1次高齢者ブーム」が始まろうとしているのだ。

第50回
休日を増すことによって、経済活性化につながるという意見がある。これは本当か。確かに、休日が増え、レジャーが増えると、消費全体が押し上げられるという固定観念はある。だが少し詳しく分析すると、それは怪しいということがわかった。

第49回
2011年は当初、どの国でも景気回復への強い期待が見られ、「出口戦略」が模索されていた。しかし、昨年1年間を振り返ると、大きく期待外れだった感が否めない。2012年も、不安が先送りされる状況が続くのだろうか。行方を占ってみよう。

第48回
欧州危機、東日本大震災、そして年の瀬に流れた北朝鮮の指導者交代のニュース――。この1年は、日本にとってまさに「内憂外患」の年だった。筆者は、この状態が2012年も続くと見ている。日本が経済面で取り組むべき課題とは何か。

第47回
欧州の財政危機の成り行きを見て、日本の財政は他人事だとは思えない。現在の欧州諸国の対応を見ていて、「これはまずい」ということがいくつもある。今回は、日本が再び金融危機に直面したとき、どう対処すべきかという教訓を提言したい。

第46回
日本の金利はさらに上がり続けるのか。今日の国家は、国債の市場での評価をベースにした「ソブリン・ワールドカップ」という名の生き残りゲームを続けている。次の二次予選では、経常収支に変わり「暗黙の信認の3項目」が議論されるだろう。

第45回
2000年代以降の日本の失業率の特徴は、女性に比べて男性が顕著に高い「性別格差」にある。それは突き詰めると「業種格差」であえい、少子化の大きな要因となる。TPPの是非はともかく、これを是正するためには産業(通商)政策が必要だ。

第44回
TPP交渉では、農業関係者を中心に反対意見が強い。しかし、農業に関しては日本が享受できるメリットも多い。これまでわずかに留まってきた日本の農産物の輸出を拡大するためには、これまでの先入観と地道に戦っていくことが必要だ。

第43回
足もとの金融市場は、それまでの混乱から「温かさ」を迎えているが、それは春の訪れを示す兆しなのか、それとも単なる冬の前の小春日和・インディアンサマーなのか。年末から来年にかけて、市場関係者が最も期待できる市場はどこだろうか。

第42回
震災後に想定以上のスピードで回復し、「大きなV」を描いてきた日本経済は、これから民間主導の復旧が一服し、「小さなV」に向かうだろう。ただし、それは景気後退にはつながらない。背景にある復旧・復興対策の効果を詳しく分析しよう。

第41回
中国の名目GDPは、2016年までに2010年の2倍に拡大する見通しだ。そうなった場合、日本経済にはどういった影響が及ぶのだろうか。見通しによると、実は製造業だけでなく、「非製造業」にとっても想像以上のチャンスが舞い込む可能性がある。

第40回
9月後半、米国の10年金利は1.8%台の水準に低下した。この水準は大恐慌の後の状況を引きずった1950年前後の水準、つまり約60年ぶりの水準だ。誰も経験したことのない「未体験ゾーン」に突入したグローバル金利は、下期にどう動くのか。

第39回
欧米経済に暗雲が漂うなか、「日本化」(Japanization)という表現が市場やメディアをにぎわせている。日本化とは、いったいどんな現像なのか。日本の実体経済、財政、金融などの象徴的な側面を通じて、「日本化」の行き着く先を分析しよう。

第38回
国民が豊かさを取り戻すためには、雇用拡大・賃金上昇が最重要の課題である。しかしエコノミストは、景気分析で生産、輸出、収益ばかりに関心を注いでいる。実は、製造業の生産拡大と雇用拡大はイコールではない。それを証明してみよう。

第37回
海外のメディアで急速に「Japanisation」(日本化現象)という概念が話題になった。頻度は、金融緩和への期待感が強まった昨年以上の状況だ。欧米経済は、本当に「日本化現象」をたどるのだろうか。何より、新内閣の政治手腕に注目が集まる。

第36回
金融市場のパニックはようやく収まりつつあり、景気腰折れのリスクは限定的となっている。日本については、野田新総理の政策に注目が集まる。新内閣への期待で、9月末にかけて株価は上昇し、債券市場では利益確定売りが先行し易いだろう。

第35回
筆者の景気に対するメインシナリオは、「2012年4~6月期に向けて、巡航速度を超える回復が続く」というものだ。むろん、こうしたシナリオには多くの不確実性が伴うが、それでも景気の回復が続くと見る理由を、多角的に分析してみよう。

第34回
S&Pが米国債を格下げし、米国債は史上初めて最上位のAAAを喪失した。その波紋は予想以上に大きく、米国発の信用不安は世界の金融市場を揺るがしている。このままドルの凋落は止まらないのか。米国債格下げは「終わりの始まり」なのか。

第33回
日本の銀行は、毎年8月頃から下期に向けて年度当初の計画修正を行ない、有価証券運用に比重をかけることを繰り返してきた。それは南極で氷を売り続けたようなものだった。その背景を踏まえ、現在の銀行が置かれた運用環境を考えてみよう。

第32回
世界経済の中心である米国は、リーーマンショック後の景気回復と財政再建の二兎を追い、非正統的な金融緩和を続けた結果、深刻な「悪性インフレ」を台頭させることとなった。今後の焦点は、議論が紛糾している財政赤字問題の行方となる。
