2012.11.28
リフレ相場は短期間で終わるインフレ予想が演出する円安・株高――熊野英生・第一生命経済研究所経済調査部 首席エコノミスト
大規模な金融緩和や日銀法改正まで踏み込んだ安倍晋三・自民党総裁。市場はそれに反応して、円安・株高が続く「リフレ相場」となっている。筆者は、この流れはそれほど長くは続かないと見ている。日銀には期待に応える手段がない。
第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト
くまの・ひでお/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト。 山口県出身。1990年横浜国立大学経済学部卒。90年日本銀行入行。2000年より第一生命経済研究所に勤務。主な著書に『バブルは別の顔をしてやってくる』(日本経済新聞出版社)など。
2012.11.28
大規模な金融緩和や日銀法改正まで踏み込んだ安倍晋三・自民党総裁。市場はそれに反応して、円安・株高が続く「リフレ相場」となっている。筆者は、この流れはそれほど長くは続かないと見ている。日銀には期待に応える手段がない。
2012.11.21
2012年の日米債券市場の最大のリスクは、オバマ大統領が再選されないことだった。ロムニーが大統領になった場合は、金利上昇が起きると見る向きが多かったためだ。足もとでは、むしろ「金利が上がらないリスク」が顕在化し始めた。
2012.11.7
日銀は2ヵ月連続となる追加緩和に打って出たが、さらなるリスク資産の買い入れが求められている。リスク資産の買い入れは、損失発生のリスクを高め、結果的に国民負担につながる。この機に、中央銀行の自己資本の毀損をどの程度重視すべきかを考え…
2012.11.1
足もとで日銀は必死に資産買入基金残高を増やしているが、インフレは起きないというのが金融関係者の大方の合意である。一方で政治家からは、「小出しではダメだ」と怒られる。日銀は何をすれば、非難されずに済むのだろうか。
2012.10.24
金融緩和は行なわれたものの、実物経済では製造業を通じた輸出連鎖が経済の収縮を強めている。そんななか、世界中が「政局化」し、世界的に「決められない政治」状況になっている。これは、1930年代の世界大恐慌時の環境に似ている。
2012.10.10
マクロ経済の先行きが見通しにくくなっている背景には、政治がある。政治家の間でも意見が分かれる財政・金融政策の行方をどう読むべきか。財政政策を「波の高さ」と「波の拡がり」、金融政策を「又は」と「及び」に注目して考えたい。
2012.10.3
日本経済が景気後退に陥るリスクが高まっている。景気シナリオを考えるときの焦点は、米国経済の行方だ。ひとえに年始からの「財政の崖」をうまく乗り切れるかどうかにかかっているが、気がかりなのは「日本化」の兆候が見えることだ。
2012.9.26
9月は、日米欧の中央銀行が同時に金融緩和のかつてない技を競い合う「金融緩和オリンピック」だった。金融緩和に伴い、長期金利上昇と市場の「リスクオン」の環境が続いており、実体経済では予想を上回るペースでの減速が生じている。
2012.9.12
消費税率引き上げの執行リスクはいまだ強い。それに対する手立てとして、三党合意では「防災・減災」に焦点を当てた「現代版日本列島改造論」とも言うべき大規模な公共投資が議論されている。果たして社会資本ストックの量は妥当か。
2012.9.5
社会保障と税の一体改革関連法案が成立し、消費税率の引き上げが決まったが、肝心要の年金制度の見直し案はどこに行ったのか。国民の間には、「自分たちが掛けた公的年金が、将来、返ってこなくなる」という不信感が蔓延している。
2012.8.29
7月以降、米国の経済指標の下方バイアスにも歯止めがかかり、市場の動きは悲観から楽観モードへ塗り替わった印象がある。だが、その持続性は本物だろうか。回復が期待を下回れば、金利低下のサイクルを繰り返す可能性もある。
2012.8.8
米国での大干ばつや黒海沿岸の穀物産地での高温・乾燥などから、大豆、トウモロコシ、小麦の先物価格が急上昇している。消費者物価への影響が懸念されるなか、それを読み解くキーワードは国際市況と政府売渡価格の「時差」である。
2012.8.1
野田首相は、「分厚い中間層を復活させる」という表現を用いることが多い。しかし、中間層を復活させることは非常に困難だ。中間層が薄くなる現象は、さらに進む可能性がある。それを承知した上で、中間層を増やす計画を考えてみた。
2012.7.25
日本の政治の特徴は、長らく「決められない政治」とされてきたが、消費税増税に取り組み、IMF資金基盤強化への貢献に言及した野田首相のリーダーシップが、海外で高く評価されている。CDSプレミアムは、米国に次ぐ信用度の高さである。
2012.7.11
回復を続ける日本の景気は、2013年前半に減速へ転じそうだ。そうなれば、消費税率の引き上げは遅れるかもしれない。政局が起こりつつあるなか、浮上した補正予算の編成案では、現代版「日本列島改造論」の機運が高まる可能性もある。
2012.7.4
2011年度の税収も、当初予算の見積もりから大きく上ブレた。例年、税収の上ブレ分は歳出拡大に使われがちだが、これを肩代わりにすれば復興増税をかなり圧縮できるはずだ。消費税があれだけ議論されながらも、この事実は問われない。
2012.6.27
ギリシャの再選挙で緊縮財政派が過半数を占め、組閣も行なわれたことで、安堵感が漂っている。ただし、これで欧州債務問題が収まったものではなく、本質は何も変わらない。怖いのは経常収支不均衡だけでなく、預金不均衡の拡大だ。
2012.6.13
追加金融緩和に向けた市場の期待を強める要素が連なっているが、追加緩和が実体経済を刺激する経路はますます細くなっている。日本の金融政策は、自然利子率と実質政策金利の逆転という本質的な問題に直面している。
2012.6.6
企業は、どんどん若い勤労世代に賃金分配をしなくなっている。若者の人数が減っているので、配分する報酬額が減っていても仕方がないと考える人は多いだろう。本当にそうなのか。筆者はその点にこそ、大きな誤解と問題が隠されていると思う。
2012.5.30
G8首脳会議では、欧州債務危機への対応について、財政の健全化と経済成長の両立を追及する方針で一致した。こうした動きからもわかるとおり、ポピュリズムと政治上の党利党略が生じる「ギリシャ化」現象が蔓延し始めている。
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