
武藤正敏
第20代大統領に、尹錫悦(ユン・ソギュル)氏が当選した。これに対する周辺国の反応が歴然としている。米国は、米国・日本・インド・オーストラリア4カ国の安保体制「クアッド」協力に韓国が踏み切ることを期待、これに対し中国は、反中的な大統領の誕生を懸念、そして北朝鮮は、軍事衝突と戦争しかないと威嚇した。

3月9日、韓国大統領選挙が行われ、最大野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソンヨル)候補が得票率48.56%となり、47.83%を獲得した李在明(イ・ジェミョン)氏を0.73%上回って第20代大統領に当選した。これによって文在寅大統領による革新系政権から保守政権への交代が実現した。

ロシアのプーチン大統領は21日、ウクライナ東部で政府軍との紛争を続ける親ロシア派武装勢力の占領地域の独立を一方的に承認した。さらに、ウクライナ東部の親ロシア派武装勢力が「ウクライナ軍の攻撃を撃退するため」の支援をプーチン大統領に要請したのを受け、24日、ウクライナへの軍事侵攻を始めた。ウクライナ各地の軍事施設が空爆されたほか、首都キエフでも爆発音が聞こえている。

韓国の中道系野党「国民の党」代表の安哲秀(アン・チョルス)氏は13日、動画による記者会見で、保守系最大野党「国民の力」候補の尹錫悦(ユン・ソギョル)氏側に、世論調査による予備選で候補を一本化することを提案した。今回の統一候補の提案は、大統領選挙戦の流れを大きく変える契機となりそうである。

4日に行われた北京オリンピック開会式で、韓国の伝統衣装である韓服を着た女性が中国56の民族の代表の1人として出演したことに対し、韓国のメディアが「中国が韓国を少数民族扱いした」との批判を強めている。

北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」などは20日、北朝鮮の金正恩総書記が19日に朝鮮労働党中央委員会政治局会議を開催し、「われわれが先決的に、主導的に取った信頼構築措置を全面再考し、暫定停止していたすべての活動を再稼働する問題を迅速に検討することに関する指示を当該部門に布置(指示)した」と発言したと報じた。

韓国は、文在寅政権が同盟国である米国よりも中国に気を使う一方、国民は中国を嫌っており、両者の姿勢は好対照である。文在寅大統領が中国共産党に対し100周年の祝賀を述べたことは、韓国国民の朝鮮統一に対する思いを踏みにじっているとしか思えない。

北朝鮮は5日に極超音速ミサイルを発射し、さらに11日にも弾道ミサイルと推定される飛翔(ひしょう)体を発射した。韓国軍当局によれば、ミサイルはマッハ10の速度が出ており、5日のミサイルと似た地域から発射されているとのことである。このため、国連安保理の会合や、韓国軍が5日のミサイルは極超音速ミサイルではないと否定したことへの北朝鮮による反発であり、断固ミサイルの性能向上を進めるとする意志の表れであるとの分析が出ている。

韓国では3月9日に大統領選挙が行われる予定だが、大統領選候補者に関する各種世論調査で、最大野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソギョル)氏の支持率が下落し、与党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)氏の支持率が上昇している。2カ月前の「国民の力」の大統領候補選出時点では尹錫悦氏が断然優位な状況だったのと比べると、形勢は正反対の状態となった。

日本人にとって韓国はわかりにくい国だ。特に今年の文在寅政権の対日政策は右往左往した。韓国の裁判所の慰安婦問題判決、徴用工問題の請求権の扱い、東京オリンピックを巡る反日の動き。文政権は、対日で時に歩み寄りとも思える姿勢も示したが、実際には原則を変えてはいない。

文在寅政権になってから韓国の合計特殊出生率は急減している。このまま進めば、韓国の人口は最悪の場合、50年後には現在の60%ほどに低下するとの予測もある。韓国にとって今が人口減を食い止める最後の機会のはずであるが、文政権は人口問題を回避する一方、国内政治的には分断を一層深化させ、経済的には韓国経済を支える財閥企業をたたき、労働組合に肩入れして経済の弱体化を進めている。

文在寅政権は、韓国社会が財閥の独占的支配に不公平感を抱いていることから、財閥への規制強化を進め、財閥トップの継承に口を挟み、労働組合の財閥への影響力強化を図っている。加えて、最低賃金の急激な引き上げによって、労働者の就業機会を減らし、格差を広げる副作用を生んでいる。特に、自営業者は新型コロナの影響があって悲惨な状況になっている。

韓国は既に冬季に入っている。新規のコロナ感染は増えるだろう。そしていったんオミクロン株の感染が拡大し始めると、韓国政府にとって有効な対策は取りづらくなるだろう。そうなれば文政権を支えてきたコロナ対策「K防疫」成功の神話は瓦解するだろう。K防疫の失敗は、文政権に致命的な打撃を与えかねない。

韓国の大統領は、帝王のような絶対的権力を握った大統領だとよく言われる。過去の帝王は自分の権威の確立、統治の正当化のため、しばしば歴史を改ざんしてきた。文在寅大統領が進めた積弊の清算、歴史の見直しはまさに帝王が行った歴史の改ざんと同じようなものである。

文在寅大統領は21日、KBS放送の国民との対話に出演した。対話を通じて文大統領に出された質問の多くは新型コロナに関するものであった。それ以外にも不動産、青少年の雇用、災害支援金の給付などの問題が取り上げられた。だが、文大統領の発言は、うそと言い訳、自画自賛、責任転嫁に終始し、国民に真実を告げなかった。

文在寅大統領は、韓国の国防力を急速に増大させている。これは革新系政権に共通することであるが、文在寅政権には特にその傾向が著しい。これは米軍に頼らない自主国防力の強化を目指すものではあるが、その目的が危ういと言わざるを得ない。

韓国の主要紙中央日報は、文在寅大統領が提唱する北朝鮮との「終戦宣言」について連日報道している。文大統領は任期を約6カ月残すのみとなったが、その期間を活用して政権のレガシーとしようとしているのが、北朝鮮との関係修復であり、その象徴が南北首脳会談であろう。しかし、文大統領が焦って北朝鮮との関係改善を図ろうとすれば、朝鮮半島の平和と安定にとって弊害が大きいだろう。

韓国社会で起きていることはドラマとよく似ているといわれる。まさにそれが、Netflixで配信されて世界90カ国で視聴回数1位となった韓国ドラマ「イカゲーム」である。こうしたドラマを生み出す背景には韓国社会の厳しい現実がある。それは国民の公平促進を訴えてきた文在寅政権になって、社会の不公正と不平等に一層の拍車がかかったことが国民の夢を奪ってしまったということであろう。

北朝鮮は9月11、12日に巡航ミサイル、次いで15日には弾道ミサイルを発射した。また、国際原子力機関(IAEA)によれば、北朝鮮は7月以降、北西部の寧辺のウラン濃縮施設を再稼働した可能性が高いという。

来年3月に行われる韓国大統領選の候補者を決める与党「共に民主党」(以下“民主党”)の予備選が始まった。初戦となった4日と5日の投票では李在明(イ・ジェミョン)京畿道知事が過半数を獲得し、優勢な滑り出しとなっている。
