
武藤正敏
文在寅大統領は3月1日、1919年の「三一独立運動」記念式典で演説を行った。三一独立運動は、日本に併合され、支配された中で、民族の自尊心を発揮し、日本に抵抗した歴史の象徴である。これは韓国人にとってのプライドを意味する。

文在寅大統領は米朝関係改善を模索する一環として、米国が期待する日韓関係改善を演出し、バイデン政権に取り入ろうとしている。1月18日の年頭記者会見では、慰安婦裁判の判決について「正直困惑している」と述べ、2015年の慰安婦合意が公式合意であったことを認めた。

文在寅大統領は任期があと1年余りとなった。文大統領はその残りの短い期間に南北対話および米朝対話の突破口を開くことに執着し、焦りも感じているようだ。

金正恩朝鮮労働党総書記が米韓合同軍事演習の中止を求めたのに対し、文在寅大統領は1月18日の記者会見で、「必要なら北朝鮮と合同軍事演習について協議できる」とする発言を行った。合同軍事演習の一方の当事者である米国と調整した上での発言ではなく、まず、韓国が行動を起こして既成事実を作り、これに米国を引きずり込もうとするいつものパターンの行動である。

2020年版韓国国防白書は、日本に対し従来使用していた「パートナー」という言葉は使わず、単に「隣国」と表現した。これは日本が防衛白書の中で、韓国との「幅広い協力」という表現を削除したことに伴う措置であろう。

文在寅氏は昨年来、対日関係改善を図りたい意思を日本側に投げかけている。たとえば、朴智元国家情報院長が日本を訪問し、小渕・金大中の時のような政治宣言で日韓関係の修復を図ろうと呼び掛けた。ほかにも、金振杓韓日議連会長が訪日して東京オリンピックに向けた日韓の協力を提案したり、新駐日大使に左派系では珍しい知日派の姜昌一(カン・チャンイル)氏を任命したりした。

韓国政府は、これまで日韓で懸案問題があると、米国に働きかけ、米国を味方につけることで日本に圧力をかけ、国際的な日本非難を高める戦術を駆使してきた。韓国が自国以外で慰安婦を象徴する少女像を最初に作り、展示したのも米国であった。

ソウル中央地裁は1月8日、故ペ・チュンヒさんら元慰安婦12人が日本政府を相手に起こした損害賠償訴訟で、原告1人あたり1億ウオン(約950万円)の支払いを命じる判決を出した。

今年1月5日付朝鮮日報は「党のエネルギーだといわれていた親文在寅派、今や党の足かせに」と題する記事を掲載している。強硬な親文在寅派が過激な声を上げるたびに、与党内の健全な議論を妨害し、国民世論とはかけ離れた方向に与党「共に民主党」を誘導している。それによって「中道層、無党派層を政権不支持に追いやっている」というのがこの記事のテーマである。

韓国の国会は14日、北朝鮮を批判するビラの散布を禁止する対北朝鮮ビラ散布禁止法を与党「共に民主党」の強行採決により成立させた。従来の「南北関係発展法」に一部条項を追加したものが今回のビラ禁止法である。

文在寅大統領は検察改革と称して、秋美愛(チュ・ミエ)法務部長官に尹錫悦(ユン・ソクヨル)検事総長を懲戒に追い込ませ、解任しようとしている。

中国の王毅国務委員兼外相が11月25~27日韓国を訪問した。26日には康京和(カン・ギョンファ)外相と会談、文在寅大統領を表敬した。王毅外相の日程で注目されるのは、タイトな非公式日程である。27日には李海チャン(イ・へチャン)元首相・「共に民主党」前代表、朴炳錫(パク・ビョンソク)国会議長ら与党内の代表的「中国通」と呼ばれる実力者にすべて会談した形になっている。李海チャン氏は盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領や文大統領の特使として中国を訪問している。王毅外相が韓国を訪問した目的は「バイデン新政権発足を意識した、米国へのけん制と朝鮮半島問題で米国に主導権を渡さないとの姿勢」であろう。

11月3日に行われた米大統領選挙は、バイデン氏が当選に必要な270人を超える選挙人を獲得し、勝利宣言を行った。米国の世論調査では、国民の8割はバイデン氏が当選したとの認識であり、米国では日ごとにトランプ大統領の形勢が悪くなっているといわれている。

少し気は早いが、韓国の世論調査会社リアルメーターが発表する次期大統領選挙(2022年)への出馬が予想される人物の支持率調査がある。これによれば、尹錫悦(ユン・ソギョル)検事総長の支持率は前月より6.7ポイント上昇した17.2%の3位であった。

文在寅大統領は9月22日、テレビ会議形式で開かれた国連一般演説で、南北終戦宣言を提案した。終戦宣言を提案したのは今回が初めてではなく、北朝鮮もいったんは合意していたが、南北関係が緊張すると、同宣言には見向きもしなくなった。

文在寅政権は元慰安婦の問題などについて、日本政府に執拗に謝罪を求め続けている。こうした韓国政府の外交姿勢に、正当性はあるのであろうか。最近の文在寅政権の外交政策から、韓国にとって謝罪とは何かを検証してみたい。

韓国の文在寅大統領は14日、「日本軍慰安婦被害者をたたえる日」にビデオメッセージを寄せ、さらに翌15日には「光復節(解放記念日)」記念行事に出席し、演説を行った。内容は日本に対する直接的な批判は避けており、これ以上日韓関係を悪化させないようするという姿勢が見えるとの評価もあるものの、いずれも従来の虚しい主張を繰り返したものだった。

文在寅政権は総選挙で圧勝して以来、その本性をあらわにしている。民主主義を踏みにじり、政権の思いどおりに政治を動かそうとしているのだ。そこには野党との対話どころか、必要な手続きすら無視している。

文大統領は、内政では国内融和を図るよりも対立をあおり、左派政権を永続化させ、保守派を徹底的に締め出そうとしている。こうした文在寅政権の体質についてはこれまで何度か寄稿している。そこで今回は、日常生活における韓国国民の不幸という側面に絞って、今の韓国社会を深掘りしてみたい。

世論調査機関のリアルメーターが調査したところによると、文在寅大統領の国政遂行支持率が7月第2週に1.1%下落して48.7%となった。最近では対北朝鮮政策の失敗の他にも、最近は政権に近い有力者のセクハラ疑惑などの不祥事が注目を集めている。これらは支持率にどう影響していくのだろうか。
