
武藤正敏
韓国国会では、与党・共に民主党が推進する「言論仲裁法改正案」(いわゆる“言論統制法”)に引き続いて、旧日本軍の慰安婦被害者や関連団体に対する名誉棄損を禁止する内容を盛り込んだ「慰安婦被害者法改正案」を国会に発議しようとしている。

2021年8月15日、第76回光復節で行われた文在寅大統領の演説は、日本には「対話」を、北朝鮮には「平和」を呼び掛けたものであった。それは原則論に終始し、前向きなメッセージはなかった。

尹錫悦(ユン・ソギョル)前検事総長が7月30日、電撃的に最大野党「国民の力」に入党した。尹氏は、6月29日に出馬表明をしてから支持率がじり貧であった。それには、尹氏およびその家族を巡るスキャンダルと、政策ビジョンの物足りなさ、政治経験の不足からくる失言などが絡み合っている。尹氏は、文在寅大統領と対立することによって国民の同情と期待、そして支持を集めてきた。このため与党「共に民主党」は尹氏を目の敵として攻撃を仕掛けてきている。そして孤立無援の尹氏がこれに耐えうるのか難しい状況となっており、強い政治的後ろ盾が必要な状況になった。

7月14日、オリンピック選手村の韓国選手団住居棟に、「反日の英雄」とされる李舜臣将軍の対日戦勝利を連想させる横断幕が貼り出された。これは日本を打ち負かそうという、スポーツの国際大会にふさわしくない反日文句である。

6月11日、最大野党「国民の力」の代表選挙において、これまで国会議員選挙に3度落選し、国会議員経験のない李俊錫(イ・ジュンソク)氏が選出され代表に就いた。同氏が選出された背景には若者の文在寅大統領離れがある。李代表は文在寅政権の交代を最大の使命とし、タブーのない姿勢で韓国政治を変えようとしている。

米国のソン・キム北朝鮮担当特別代表が6月19日から23日まで韓国を訪問した。文在寅政権は、ソン・キム代表の訪韓で「北朝鮮を非核化の交渉に早く呼び込むために、対北朝鮮制裁の緩和を触媒として活用しよう」(李仁栄〈イ・イニョン〉統一相)と期待していた。

文在寅大統領にとって議長国の英国に招待され参加したG7の場での日韓首脳会談は、ぜひとも実現したい課題であった。そのため、従来の反日政策を一時保留して融和的な政策を取ってきた。しかし、G7では日韓首脳会談は簡略化した方式でも実現しなかった。

韓国大統領府の青瓦台は、G7サミットに文在寅大統領が参加することの意義について、「主要20カ国(G20)を超え、主要7カ国(G7)諸国と肩を並べるほどまで高まった韓国の国際的地位を示すもの」と誇らしげに語った。文大統領は議長国である英国の招待で、今年のサミットに参加し、第1セッション「保健」、第2セッション「開かれた社会と経済」、第3セッション「気候変動と環境」に出席した。

ソウル中央地裁は6月7日、日本製鉄、日産化学、三菱重工など朝鮮半島出身労働者と遺族ら85人が日本企業16社を相手取り1人当たり1億ウォン(約980万円)の損害賠償を求めた訴訟で、原告の訴えを棄却する判決を言い渡した。

米韓首脳会談は、米韓双方にとって同盟関係を再構築する上で成果のあった会談であった。特に、韓国は会談前には心配事が多かったはずだが、思いのほかうまくいったというのが率直の感想だろう。最近の文在寅大統領の国内における支持率は下がっており、是が非でも会談で成功を収め、政権の浮沈に生かしたいところであった。

文在寅政権は地政学を理解していない。同盟国である米国よりも中国に気を使っている。中国は、国際法を無視し、領土と影響力の拡張を虎視眈々と狙っている。さらにあらゆる合法・違法な手段もいとわず、先端技術で世界のトップに躍り出ようとしている。

韓国は日本のことを強く意識しており、日本に負けたくないという気持ちが強い。韓国のマスコミはこうした背景から、連日、日本の出来事を自国のことのように詳しく報じている。韓国のマスコミは、自国の状況と対比し、日本国民も今の菅内閣に絶望感を抱いているのではないかとの見方を強めている。日本国民として極めて残念な状況であるが、それは現実でもあるように思われる。

日米韓3カ国の外相会談が5月5日、英ロンドンで行われた。米国は対北朝鮮政策の検討結果の詳細を明らかにしていないが、日米韓外相、日米外相、米韓外相会談の内容を見れば、その輪郭を想像できるのではないか。

文在寅大統領は4月20日、中国で開催されたボアオ・アジアフォーラム(以下“ボアオ・フォーラム”)に遠隔で参加し、ビデオメッセージを寄せた。また、21日にはニューヨーク・タイムズ紙(以下“NYT”)でインタビューが掲載された。文大統領はボアオ・フォーラムでは「アジアの役割」を強調し、中国への協力姿勢を示す一方で、NYTとのインタビューでは「シンガポールの米朝合意を履行すべきと警告している。

日米首脳会談について朝鮮日報は4月16日、「対北朝鮮政策は日米首脳会談で結論を出すのではないか」と米国バイデン政権の幹部の発言を引用し報じた。仮に、対北朝鮮政策を日米首脳会談で決めたということになれば、米朝の仲介役を自認してきた文在寅大統領としては、致命的なブローを受けることになる。

4月7日のソウル・釜山市長補欠選挙の惨敗を受け、「共に民主党」(以下“民主党”)の内外から、一層徹底的な反省と刷新を求める要求が続出した。1年生議員81人は9日、集会を開き「党改革の主体になる」と明らかにした。

韓国の鄭義溶(チョン・ウィヨン)外相は4月2日、中国福建省厦門に赴き、翌3日に中国の王毅外相と会談した。

文在寅大統領に近いハンギョレ紙が、リアルメーターの調査で大統領の国政遂行への支持が過去最低になったことを受け、これは単なる支持率の低下だけではなく、「大統領選挙の構図まで“劣勢”になった」との危機感をあらわにしている。

文在寅政権は、公営企業職員による土地投機疑惑の広がりに大きな衝撃を受けているようであり、政権発足以来最大のピンチを迎えている。

米国のトニー・ブリンケン国務長官とロイド・オースティン国防長官は3月15~17日の日程で訪日した後、17日から1泊2日の日程で韓国を訪問することで日程調整しているという。韓国では鄭義溶(チョン・ウィヨン)外相、徐旭(ソ・ウク)国防相と「2+2(外務・国防相)会議」が実現する見込みである。
