夏場の電力不足と、計画停電の実施が懸念されている。震災直後、予定が何度も覆される“無計画停電”で巻き起こされた混乱はご免被りたい。しかし実際のところ、夏場の電力は充分足りるはずなのだ。必要な施策について、まだ国も十分な手を打てていないので、ここで提案しよう。
東電の供給能力は
震災直後より1500万kW増
一足早く梅雨がやって来た。果たして、昨年のような猛暑になるのだろうか。夏場の電力供給不足が予想され、節電が喧伝されているため、みな「家庭やオフィスはどんなに暑くなることか」「また計画停電で電車が大混乱するのか」と今から戦々恐々である。
しかし、結論から言えば、今夏の電力供給量は足りるはずだ。
まず、東京電力の供給能力は日を追って増強されている。確かに、震災直後の3月下旬には、4650万kWという厳しい見通しだった。
ところが、その後の火力・水力発電所の復旧などで供給能力は増強されつつある。5月下旬の見通しでは、揚水発電を含めると6000万kWを越え、実に当初予測より約1500万kWも上乗せされた。
第一回でも述べたが、日本のピーク時の電力需要量は10年前から下がり続けている。近年では、観測史上もっとも暑かった昨年の夏でさえ、6000万kW弱である。もともと大震災前に予測していた今夏の最大電力量である5700万kWと比較しても、現実の供給能力は十分にカバーしていることがわかる。
では、電力需要のピーク使用量が急増する恐れはあるだろうか?
震災後に取り組まれたさまざまな節電対策の効果をみれば、ほとんど考えにくい。震災直後、東電が緊急の計画停電を発表したときの、節電の呼びかけと自粛による省エネ・節電効果は、なんと約500万kW前後にのぼったと推測される。