10月1日、いよいよNHKでドラマがスタートする『神様の女房』。“経営の神様”として知られる松下幸之助の妻、「松下むめの」の生涯を描いた感動の物語『神様の女房 もう一人の創業者・松下むめの物語』のドラマ化だ。松下むめの役には常盤貴子、松下幸之助役に筒井道隆、むめのの父・清太郎役に津川雅彦など、豪華な顔ぶれの「土曜ドラマスペシャル」。3週間、3回にわたって放映される。
このドラマの脚本を手がけたのが、大河ドラマなど大ヒットドラマを数多く手がけたことで知られるジェームス三木さん。ジェームス三木さんは、どのようにして、このドラマ『神様の女房』を作り上げたのか。脚本家として心がけていること、さらにはその技術とは…。2回にわたって、スペシャルインタビューをお届けする(取材・構成/上阪徹、写真/石郷友仁)。

最近のドラマは説明しすぎ。余白があるからいい

――まず、幸之助の夫人、むめのさんについて、どんな印象をお持ちになられましたか。

 実直な方だな、と思いました。最初に原作のゲラをもらって読んだんですが、さすがに長く仕えた執事の方が書かれているだけあって、夫人の人柄がよく出ていますね。それを強く出したくて、伝記ではなく、小説になさったんだと思いました。いろいろフィクションも入っていますからね。

 いくつか資料も読み込みましたが、執事の書かれた小説と、むめの夫人の印象はあまり変わりませんでした。

 ただ、僕にとってやっぱり最大の疑問だったのは、どうしてむめの夫人は、あんな無一文の貧乏人だった松下幸之助さんのところに嫁に行ったのか、ということです。それはやっぱり大きな疑問でした。そして結局、彼女には見る目があった、ということなるわけですね。

――松下幸之助のご夫妻を描く、ということについては、どうですか。

 松下幸之助さんといえば、経営の神様ですから、神様のことを書くわけですね(笑)。当然、日本全国にファンがたくさんいらっしゃるわけで、これは荷が重いな、と思いました。失礼があってはいけないし、どこまで書くのが許されるのかな、と(笑)。

――脚本を書く上で、最初に意識なさったことはどんなことでしたか。

 むめの夫人のことを、とてもよく知っている人が原作をお書きになっているわけですから、内容はその筋に沿ってやらないと、と思いました。私のほうで勝手に作り話はできないな、と。

 ただ、ドラマにするとき、伝記物によくあるのが、説明やナレーションがやたらに入ってしまうことなんです。回想や心の声がたくさん入りがちなんですね。

 今回は、そういうものは一切なくしてしまいたいと思いました。会話だけで物語を進める。よくわからなくてもいいんです。そうすると、見る人が、いろいろな想像ができますからね。

 そもそも最近のテレビは、ドラマでもニュースでも説明し過ぎなんですよ。ワイドショーだって、解説が多すぎる。あんなものはいらないと思います。見る人の想像力を奪ってしまうからです。

 余白があるからこそ、想像ができるんです。わからない部分があってもいいんですよ。実際、僕だって、ほとんど想像して書いているわけですからね。