強みは弱みになる。ユーザー視点を取り入れるための多様性

小林:強みってともするとある種のエゴになりかねないと思います。強みを押し付けても、ユーザー視点からは違うかもしれませんよね。

森川:ソニー時代がまさにそうで、君はソニーらしくないってよく怒られてました。当時はそのソニーらしさが強みだったんですけど、ネットの時代になって弱みになってしまった。それでもソニーらしくあるべきという教育を受けてきたので変えられなかった。ユーザー視点を取り入れるダイバーシティが欠けていたんだと思います。

村上誠典(シニフィアン共同代表。以下、村上):ダイバーシティともつながる話ですが、前職でも今回も、海外に展開していますよね。日本のベンチャーでは海外展開がなかなかうまく行っていないところが多いですが、前職の経験を今回に活かしているようなところってありますか?

森川:まず、海外で仕事したくない人が海外でやるとだいたい失敗しますね。日本企業はそういうのが多いです。海外でいろいろな企業に会って話を聞くと、言われるのが日本企業はスピードが遅いということと、日本に帰りたいとか愚痴ばかり言ってやる気がないって言うこと。その時点で終わってるなって思うんですけど、現地の歴史や文化を理解してちゃんとやれば、いいプロダクトであればうまく行きますよ。なるべくお金をかけずにスピードを速くするのが重要ですね。

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村上:モメンタムはどちらかというと現地から作ったほうがいいということですか?

森川:前職で、韓国からプロダクトを持ってこようという時に、韓国から持ってきてもうまくいかないという日本のメンバーと、韓国で成功したんだから日本でも成功するはずだっていう韓国のメンバーがいて、じゃあ日本人らしさや韓国人らしさって何で、その本質とは何なのかという議論をよくしてたんです。今も考えるのは、僕達のプロダクトの中で現地でワークするのは何で、そうでないのは何なのかをまず切り分けようということです。その上で、現地でワークするフレームワークは持って行って、それ以外の部分は現地で作ろうと。そういう切り分けを国ごとにやってますね。そうすれば投資も少ないし現地の人もやる気が出るので、それを冷静に切り分けることですね。

朝倉:事業を伸ばす際の考え方や組織の文化、意思決定のあり方など、多くの意思決定者にとって大変参考になるお話でした。今日はどうもありがとうございました!

*次回【杉山全功さんに聞く Vol.1】「檻のない動物園」を上場企業へ。上場請負人の経営論に続きます。
*本記事は、株式公開後も精力的に発展を目指す“ポストIPO・スタートアップ”を応援するシニフィアンのオウンドメディア「Signifiant Style」で2017年9月13日に掲載された内容です。