小さな気づきは大きなところへつながっている

坪田信貴(つぼた・のぶたか)坪田塾 塾長。これまでに1300人以上の子どもたちを個別指導し、心理学を駆使した学習法により、多くの生徒の偏差値を短期間で急激に上げることで定評がある。「地頭が悪い子などいない。ただ、学習進度が遅れているだけ。なので、遅れた地点からやり直せば、低偏差値の子でも1~2年で有名大学、難関大学への合格は可能となる」という信念のもと、学生の学力の全体的な底上げを目指す

坪田 そこで、もう一つ思い出したのが、僕が20代のときにリッツカールトンの元日本支社長、高野登さんのセミナーを聞きに行ったときの話です。高野さんは「ホスピタリティ」という言葉を日本に持ってきた方で。
彼も秋元さんと同じように「感性を磨きましょう。そのためには一流の経験をしましょう」とおっしゃっていました。その時僕は、質問コーナーで「感性ってどうやって磨けばいいんですか」と聞きました。すると彼は「靴を毎日磨きなさい」とおっしゃったんです。どうしてかというと「足元に感謝するということではありません。それを毎日やっていたら、今度はスーツに綺麗にブラシをかけたくなる。そこで何がわかるかというと、人と出会ったときに、その人がどれくらいの頻度で靴を磨いているかがわかる」と。

秋元 たしかに気づけますね。

坪田 それがいい加減な人は、意外とそういう細かいところを気にしない人なんだなというのわかるから、ざっくばらんに接してもいい。だけどそこが思いきりピシッとしている人だったら、そこをすごく全部ちゃんとやらないといけないということがわかるから、それに合わせてできる。「それが感性を磨くということなのです」というふうに言われたのです。
そのことに、僕は「おおーっ」と感動しました。それからそういうことを意識しだしたのですが、そういうところも、秋元さんも書いておられますね。

秋元 20代のうちに一流にふれることはとても大事だと思います。いいモノを知らなければ、悪いものもわからないですから。そして結局、構造はフラクタル。小さな話と大きな話は、結局、同じことだと思います
いきなり大きなこととか遠くのものを想像するというのは難しいけれど、目の前の、例えば相手や、周りの人が何を感じているかを想像することなら、わりとたやすい。その延長線上に、初めて会うすごい人もいるし、すごいチャンスもあるのだということですよね。

坪田 わりに小さなこととかっていうのを、当事者意識を持ってずっとやり続けていくと、最終的に長期的には、ある意味自分にも返ってくる。
それは投資という意味にも繋がっていくでしょうね。そう考えると秋元さんが21歳でNPOを始めて、地元の地域のためにやっていることは、今ここに全部繋がってきているのかもしれないです。ある意味、当時貧乏されてたわけじゃないですか。

秋元 貧乏でした。「日本一のワークプア」を目指したくらいですから(笑)

坪田 そこでバーッと荒稼ぎするのではなく、20代は人の期待を集める、そして30代で実績につなげていく。それを体現されてきたのだと思います。

秋元「20代はカネ儲けより、ヒト儲け」だと教えてもらったのは、大きかったです。とはいえ、結果、今が本当にいいのか、あるいはこの先、自分が望ましい結果になるかどうかはわかりません。ただ、大事なことは、自分で決めていけば、自分の人生のオーナーだということで決めてかかれれば、結果に対して納得はできると思うんですよね。