ほめるべきは、結果を出した人or挑戦した人?

 さらに、「ものさし」を使うと、どんなときに部下をほめたり叱ったりすればよいのかを、見極めることができるようになります。

   高い成果を上げたからほめる、失敗したから叱るという単純な話ではありません。
   部下のステージに照らしてみると、その良し悪しを判断する基準も変わるのです。

  たとえば、これまで取り組んだことのないテーマに果敢に取り組み、なかなか高い成果には結びつかないものの、後輩の指導にも熱心にあたっている3.メインプレイヤーのAさんと、慣れた仕事で一定の業績を上げるものの新しいテーマへの取り組みには後ろ向きで職場の状況にも無関心な4.リーディングプレイヤーのBさんでは、どちらを評価するでしょうか。

 目先の結果だけにとらわれると、ついつい業績を上げているBさんばかりを評価してしまいがちですが、それではいけません。Aさんは3.メインプレイヤーとして期待される役割に照らして、素晴らしい動きをしています。逆にBさんは、4.リーディングプレイヤーとして期待される役割を果たせていませんし、そもそも自分に期待されている役割がどのようなものかさえ、認識していないかもしれません。

 実際に、ステージの考え方を用いて部下育成を行おうとすると、マネジャーは2人の部下にどのような働きかけをしていけばよいでしょうか。

 Aさんには「今の仕事への取り組みや意識の高さを今後も続けてほしい」と伝え、なかなか高い成果がついてこないからといって今の動きを止めてしまわないよう、背中を押すべきでしょう。マネジャーとしてアドバイスやフォローも必要です。

 一方、Bさんには、これまでの知見を活かして手堅く業績を上げていることは評価しつつも、新しいテーマへの取り組みや職場に与える影響の大きさを自覚するよう求めることが必要になります。それは、仕事の内容へのアドバイスというよりも、4.リーディングプレイヤーとしての意識や姿勢を変えることを求めることが、育成のポイントになるわけです。

「職場のリーダーとしては、どんな貢献が求められると思う?」
「今のBさんは、職場の中でどんな存在として見られていると思う?」

  といった問いかけが有効になるでしょう。

 あるいは、「今までは個人プレーで成果を上げていればよかったけど、これからは職場のリーダーとしてそういうわけにはいかないよ」という率直なフィードバックをしてもよいかもしれません。