課長クラス以上のマネジャーにとって「会議術」は、チームの生産性を上げるために必須のスキルです。ところが、私たちには「会議術」を体系的に学ぶ機会がほとんどありませんから、悩んでいるマネジャーも多いのではないでしょうか?そこで、ソフトバンク在籍時に「会議術」を磨き上げ、マネジャーとして大きな実績を残した前田鎌利さんに『最高品質の会議術』(ダイヤモンド社)としてまとめていただきました。本連載では、その内容を抜粋して掲載してまいります。
企業において「会議」が不可欠な理由
意思決定とは何か?
会議について考えるうえで、この問題を避けてとおることはできません。会議の目的は意思決定なのですから、当然のことです。ここを押さえずして、「会議の品質」を高めることは100%不可能と言ってもいいでしょう。
まず、意思決定の定義を確認しておきましょう。『大辞林』(三省堂)には、「ある目標を達成するために、複数の選択可能な代替的手段の中から最適なものを選ぶこと」とあります。
これは、プライベートにおける意思決定も含む定義です。卑近な例を言えば、「今日のランチを何にするか?」を決めるのも意思決定。「お腹を満たす」という目標を達成するためにカレーやそばなど「選択可能な代替的手段の中から最適なものを選ぶ」というわけです。
この場合、個人の行動を個人が選択するわけですから、意思決定から行動までのプロセスは、その個人のなかで完結します。つまり、誰の意見も聞かず、誰にも相談せずとも、個人の判断で決めればいいわけです。
ところが、企業の意思決定はそうはいきません。
そもそも、企業においては、基本的にすべての意思決定の権限は社長(CEO)あるいは取締役会に属すると考えられます。しかし、実際にすべての意思決定を社長・取締役会が下すことは現実的ではありませんし、きわめて非効率的ですから、社長→取締役→部長→課長→社員という形で意思決定権限を委譲するわけです(下図参照)。
そして、意思決定者が決定したことを実行するのは部下です。社長の意思決定を受けて、各取締役は担当領域における実行責任を負い、以下、業務の細分化に合わせて、部長、課長へと実行責任が振り分けられます。最終的には、課長の意思決定に基づいて、現場のメンバーが具体的な業務を実行する。このように、常に責任者が意思決定を下し、その部下が実行するという形をとるわけです。
ここに、企業において会議が不可欠な理由が存在します。意思決定者と実行者が分離しているからこそ、両者が意思疎通を図ることによって認識を共有しなければ、企業体として一貫した活動を行うことができないからです(下図参照)。
また、各階層の意思決定者は、上位層から「方向性」は与えられているものの、それぞれの「持ち場」で具体的にどのように意思決定すべきかという「答え」はもっていません。だからこそ、実行者である部下とコミュニケーションを取りながら「最適解」を見出すために、会議というプロセスが不可欠なのです。