競合に売却をしたわけですが、そこから取れるデータは入手できるわけです。グーグルが欲しかったのは、端的にいえば「地球のモニタリングデータ」と思われます。最新鋭の小型衛星をたくさん低軌道に打ち上げる小型衛星のコンステレーションにより、これまで数週間に1回だった撮影が、毎日同じ地点で可能になります。時間分解能が上がると、地球のある地点を撮影するというよりは、地球を連続的にモニタリングすることができるようになるのです。
これまでの地球環測衛星では、地球の写真を撮ったり、その画像を利用したりするという写真的な発想でした。しかし、小型衛星のコンステレーションは動画的に捉えることができ、実際に動画撮影が可能なカメラが搭載されているものもあります。大型衛星と小型衛星の画像を両方利用して、その変化を分析する新たな利用に結びつけるケースもあります。
例えば、ショッピングモールの駐車場に止まっている車の数を時系列で分析することによって事業計画を立てる。あるいは、森林伐採が進んでいる様子を捉えることで、不法伐採や地球環境の変化を見極める。
小さなものから大きなものまで、一刻一刻の動きをまるで動画のようにモニタリングし、その地球ビッグデータをIoTと組み合わせたり、AIで分析することで、さまざまな産業や社会における経済、未来の予測に利用できるようになります。地形や道路、周辺状況などを組み合わせたデータは、自動運転などに生きてくるデータになるでしょう。
グーグルは、地球観測小型衛星のテラ・ベラ(旧スカイボックス)を売却しましたが、イーロン・マスクのスペースXが計画している小型衛星の通信コンステレーションによるブロードバンド事業に、1000億円を超える投資をしています。
グーグルは、NASAのエイムズリサーチセンターに隣接されているエイムズリサーチパークに入居しています。以前から宇宙技術や関連技術の次世代開発や実用化に、大きく関わる取り組みをしているのです。
(この原稿は書籍『宇宙ビジネスの衝撃――21世紀の黄金をめぐる新時代のゴールドラッシュ』から一部を抜粋・加筆して掲載しています)