単に変化するだけでは生き残ることはできない

 今この現在、隆盛を極めてきた大企業も、ベスト・オブ・ベストの人材を集めてきた企業も、一寸先は闇だ。

 強ければ強いほど慢心したり、自分がこれまで勝ってきたルールでとにかく勝とうとしたりする。

 しかし、それで勝ち続けた企業はない。かつて一流大学出身者に人気だった企業が、あっという間に自己崩壊していく例を、読者もいくつか挙げることができるだろう。

 変化の速い現代、まだ出現したばかりのディスラプター自身もまた、ディスラプトされる危険に既に身を晒している。

 現在ディスラプターの最右翼の一つと見なされているUberやAirbnbですら、ブロックチェーンによって、その存在価値自体を失う可能性がある。

 それでは、そのとき、彼らはどう動くべきなのか?

 答えはただ一つ、「変化に最もよく適応」する努力をすることだ。その努力を怠った者には、もれなく「失敗」がついてくるだけだ。

 ただし、単に変化するだけでは生き残ることはできない。

 危機に際して、多くの者が犯しやすい過ちは、変われば何とかなる、と変化することを目的化してしまうことだ。

 ディスラプターの多くは、変化を主導した者たちだが、生き残るのには、変化自体は重要ではない。むしろ、変化に「最もよく適応」することが重要なのである。

 ディスラプションの歴史は、変化に抵抗して滅んでいった者たちの歴史と言っても過言ではない。もちろん、中には変化に適応しようと努力しながらも滅んでいった者たちも存在する。

 しかし、生き残ることができたのは、少なくとも「変化」に「適応」しようとの意思を持ち、行動を起こした者たちからしか現れなかった、ということに留意する必要がある。

『破壊――新旧激突時代を生き抜く生存戦略』は、いうなれば「最もよく適応」するための考え方のフレームワークを提示したに過ぎない。実際にどのように適応するか、何をするかは、各人にしかわからない。

 しかし、それすら自分で考えることのできない者は、そもそも生き残ることはできないだろう。

(この原稿は書籍『破壊――新旧激突時代を生き抜く生存戦略』から一部を抜粋・加筆して掲載しています)