落合陽一氏もインターン参加。世界中から最高レベルの頭脳が集まる

 コンピューターサイエンスの世界の、最高峰の頭脳が集まっていると言われるマイクロソフト・リサーチ。公野氏は続ける。

「やはり日々、感じますね。頭の回転が速いなと。考えがとても整理されていて、ゴールに対してステップがはっきりしている。そういうのは、ディスカッションでもすごく感じます。私はとてもついていけないですね。あ、あれはそういうことだったのか、と何分後かに気づいたりすることもあります(笑)」

 キャンパスで仕事をするようになって、改めてマイクロソフト・リサーチの仕事環境の良さを実感している。

「サティアはグロースマインドセットと言い続けているわけですが、自分で学ぶための環境だったり、ツールだったり、コンテンツはとても揃っていると感じます。上司も、学ぶための機会を作ってくれたり、私がセミナーに行ったり、カンファレンスに行ったりというのもサポートしてくれます。個人の能力を伸ばして、さらにビジネスで貢献するための投資は惜しまないんだな、というのはとても強く感じますね」

 マイクロソフト・リサーチの中に、エンジニアリングアカデミーというオンラインのコースがあり、大学のように講義がたくさん揃っているという。初級、中級、上級コースがあって、参加すれば特にAI関連の最先端を学ぶことができる。

「あとはプロジェクトベースのクラスがあって、何人かがチームになって、ひとつのAI関連のプロダクトのモックアップを作っていくようなクラスもあります。参加することで、自分のスキルアップはもちろん、他の人とのネットワークを広げることも奨励されています」

 マイクロソフト・リサーチには、日本の大学院生もインターンでやってきたりする。ウェブメディアNewsPicksのインタビューで「今22歳なら、マイクロソフトに行きたい」と語っていたメディアアーティストの落合陽一氏は、実はインターンでマイクロソフト・リサーチに来ていた一人だ。バーチャルリアリティ関連の研究をしていたという。

「日本の大学院生はすごく忙しいんです。Ph. D.の学生になると、ラボの運営だったり、雑用だったりを指導教官にお願いされて、けっこうな時間をそれに取られてしまう。インターンに来れば、100%その時間を研究に費やすことができます。また、大学院生にとっては、良い国際会議で論文を発表することはとても大事なことなんですが、マイクロソフト・リサーチはそういうところに何本も論文を出しています。その経験値がとても大きい。こんなふうに論文を書けば、こんな国際会議で発表できるというノウハウがものすごく揃っているんです。3ヵ月集中してプロジェクトをやって、そうしたノウハウも学べるというのは彼らには大きな魅力だと思います」

 そして驚くべきは、マイクロソフト・リサーチを経験した人材、また“卒業”して他の会社に行った人材も含めてネットワークし、「マイクロソフト・リサーチ・アルムナイ・ネットワーク」というグループを作っているのだという。

「マイクロソフトを経験した人が、外に出てもまたそこで活躍しているというのは、私たちにとってもいいこと。そういう人が、マイクロソフトに対してポジティブな印象を持っているというところが、私たちが長く活動できていることのひとつだと思います」

 リサーチャーは全員が個室。公野氏も個室をもらっている。

「眺めは良くないですけど(笑)。眺めがいいのは、偉いリサーチャーの部屋です」

 ホワイトボードが全員の部屋にあり、可動式のデスクにモニターが二つというのが平均的なセットアップになっている。リサーチャーによっては、立ってミーティングをしている人もいるとか。

「アメリカに来てから大きく変わったのは、働くリズムですね。車で通勤しますからお酒は飲めないので、接待も会食もなくなりました。あと、アメリカは広いので簡単に訪問ができない。そうすると、Skypeで話をするのが普通になってきます。おかげで、外出や会食がギリギリまで減った印象があります」

 一方で、家族と過ごす時間は、かなり増えたという。

「ITのおかげで、家に帰ってもオフィスとほとんど変わらない環境で仕事ができるので、ワークライフバランスを取りながら仕事を続けていくことができる印象があります。例えば、週に何日かオフィスに来ない日を強制的に決めてしまって、まったく来ない人もいます。それでもちゃんとミーティングやプロジェクトが回る。ITの力があってこそだと思います」

(この原稿は書籍『マイクロソフト 再始動する最強企業』から一部を抜粋・加筆して掲載しています)