「決断から逃げること」がもたらす損失

 しかし、そんなに大げさに考えることはありません。
 課長クラスのマネジャーの決断によって、会社がつぶれるほどのことはまず起こりえません。それよりも恐いのは、決断を遅らせることであり、決断から逃げることです。そのとき、下図にある2つの代償を払うことになるのです。

孫正義社長に学んだ「信頼されるマネジャー」の鉄則

 まず第一に、決断を遅らせれば、メンバーは何一つ仕事を進めることができませんから、それだけチームの生産性は確実に落ちますを落とす。チームの生産性を高めるためには、とにかく、何かを決断して、やってみることが重要なのです。もしも、その選択が間違えていれば、それをマネジャーが認めて、すぐに別の決断をする。そして、PDCAを最速で回していくことこそが、最適解に最短距離で到達する方法なのです。

 第二に、「決断しないマネジャー」「何も決まらない会議」に対して、メンバーが信頼を失う結果を招きます。一生懸命、提案をまとめてきた担当者はもちろん、会議において建設的な意見を述べたメンバーも、「いったい何のための会議だったのか?」「この会議に意味があるのか?」と不信感をもつのも無理はありません。そして、そのとき、一気にチームは求心力を失ってしまうのです。

 ですから、会議においては、必ず何らかの「意思決定=決断」をすることを徹底しなければなりません。それまでに、担当者としっかりコミュニケーションを取って仕上げてきた提案であれば、修正ゼロでGOサインを出せるケースが大半でしょうが、万一、メンバーから重要な指摘を受けて、再度、抜本的に提案内容を考え直す必要があると判断すれば、それを決断すべきです。あるいは、軽微な修正が必要だと判断すれば、「少人数ミーティングで検討したうえで、先に進めます」という意思決定をすることもあるでしょう。

 いずれの場合でも、明確な根拠とともに、自らの意思決定を明言する。そして、その意思決定の責任をとる覚悟を決める。失敗したところで、たいしたことはありません。それに、そもそも、熟慮の末に「勝率7割」を超えると判断した提案なのですから、思い切って腹をくくることです。それが、マネジャーである自分を活かす最善の道なのです。