-------高級ブランドの事例--------
高級ブランド商品にクレームが殺到した。品質表示に誤りがあったのだ。
「節約してようやく手に入れたのに、ガッカリ!」
「長年、愛用していたのに、裏切られた思い」
「恩師へのプレゼントに購入した、相手に失礼だし、恥ずかしい」
お客様にはこだわりの強い人も多く、激しいクレームの嵐が吹き荒れた。商品に対する愛着があるからこそ、怒りが爆発したのだ。
会社は商品の自主回収を進め、商品の交換とクーポン券の提供で応対した。
しかし、「返金しないのは納得できない」という人が多かった。
「お金の問題じゃないが、返金を要求する。返品・交換ではイヤ。もう、オタクの商品を買うつもりはないから、クーポン券もいらない!」
消費者の立場からいえば、もっともな主張である。彼らをクレーマーと呼ぶのは気が引けるが、担当者にとっては悩みの種であることも事実だった。
自主回収にともなって、お客様からの苦情がドッと押し寄せ、担当者はその一つひとつに対応しなければならない。同時に、ヘビーユーザーに対しては、丁寧に事情を説明し、なんとか納得してもらわなければならない。お客様相談室のメンバーは疲労困憊していた。
ところが、会社がそれまでの方針を転換し、返金に応じることにしたのだ。
社員は困惑した。返金対応に向けて、一からお客様対応の仕組みを見直さなければならないからだ。
そして数日後——。新しい対応方法で昼夜を問わず返金手続きを進めた甲斐があって、クレームは瞬く間に収まった。まさに「現金なもの」だった。
(了)
誠意のハードルを定めておかないと、現場の担当者の困惑を招くおそれがあるのです。
しつこいクレーマーには「2人以上」で対応する
誠意のハードルを設定して「やるべきこと」をシンプルにしても、担当者がひとりでクレーマーに立ち向かっていては、やがて心が折れてしまいます。
悪質なクレーマーに対しては毅然とした態度で臨まなければなりませんが、そのためには、職場の仲間が「お互いさま」の意識をもって助け合うことが必要です。
たとえば、隣席の同僚にクレーム電話がかかってきたとしましょう。長時間対応する同僚を見ながら思うことは、「私じゃなくてよかった」というのが本音ではないでしょうか。あとになって「大丈夫?」と声をかける程度ではないでしょうか。
クレーム対応で「相棒」は大切な存在です。とくに、過剰な要求を突きつけてくる厄介なクレーマーには、複数で対応するのが原則です。その理由は3つあります。
(1)ひとりが相手とのやりとりの証人になれる
(2)「聞き役」と「記録係」というように役割分担ができる
(3)仲間がそばにいるというだけで心強い
「私にとって相棒は誰だろう?」と考えてみてください。
それは同僚でしょうか。直属の上司でしょうか。それとも、パニックボタン(警備会社への非常通報ボタン)でしょうか。
二人三脚でクレーマーに対応すればこそ、余裕をもって解決策を探ることができるのです。
『対面・電話・メールまで クレーム対応「完全撃退」マニュアル』では、こうした電話対応のほか、対面・メールでの正しい対応法、ネット炎上を鎮火させる方法など、クレーマーの終わりなき要求を断ち切る23の技術を余すところなく紹介しています。
ぜひ使い倒していただき、万全の危機管理体制を整えた上で「顧客満足」を追求してください。