潮目が変わったのは、昨秋のこと。中国政府が「ガソリン車やディーゼル車などの内燃機関車を禁止する時期が早まる」(中国駐在員)との観測が現実味を帯びてきたのだ。「仮に、全土のガソリン車ゼロの期限が35年に設定されたら、先駆けて規制強化される北京市や上海市のターゲットは30年頃に前倒しされてしまう」(同)リスクすら出てきている。

米中覇権争いは頭痛の種

 トヨタは出遅れた中国で反転攻勢を仕掛ける体制を鮮明にしていたものの、当分はガソリン車やハイブリッド車で市場を牽引し、急激なEVシフトには懐疑的な姿勢を示してきた。

 だが、その目算は狂った。年初からは、中国での生産台数の1割以上をEVなどの新エネルギー車(NEV)にするよう義務付ける環境規制がスタート。パナソニックからの電池調達だけでは、旺盛な需要に応えられない以上、CATLとの戦略的パートナーシップを締結するより他に選択肢はない。

 ここにきて、トヨタやホンダら日系自動車メーカーの経営陣を悩ませる別の事案も持ち上がっている。頭痛の種は、米中によるハイテク覇権争いの激化だ。

 1月28日、米司法省が中国の通信機器メーカーの華為技術(ファーウェイ)を企業秘密の窃盗罪などで訴追した。その真偽は定かではないが、ファーウェイは「少なくとも過去は、政府との距離を置いてきた企業」として知られる。それでも、米国当局の標的となり、日本の通信事業者やサプライヤーが影響を受ける事態に陥っている。

 翻って、ホンダやトヨタが組もうとしているCATLはどうかといえば、ある意味、ファーウェイ以上に政治色の強い企業として知られる。本社のある寧徳は、かつて習近平国家主席が書記を務めていたことから、補助金支給や税制優遇など政治的なバックアップを受けている企業だからだ。

 中国政府の産業高度化戦略である「中国製造2025」のど真ん中にEV、電池技術が位置しており、米中ハイテク覇権争いの激化に、日系自動車メーカーが巻き込まれるリスクが日増しに高まっている。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 浅島亮子)