私たちは「しなければならないこと」があまりにも多すぎて、人生はまるでモグラ叩きのゲームのようだ。次から次へと押し寄せてくる用事に追われ、四六時中、マルチタスクをこなさざるを得ない。だから、ひとつのことにきちんと集中できない。気持ちがあせるばかりで、満たされることも少ない。
しかし、いま世界中で話題のノート術「バレットジャーナル」を活用すれば、人生の舵を自分でとれるようになる。外部からの刺激や要求にいちいち反応することなく、本当に意味のある問題に積極的に取り組めるようになる。
 本連載では、バレット・ジャーナルの発案者であるライダー・キャロル氏が書き下ろした初の公式ガイド『バレットジャーナル 人生を変えるノート術』から本文の一部を抜粋して特別公開する。

1冊のノートで無意味なことをやめ、<br />本当に意味のあることに集中する

本当に意味のあることに集中する

1冊のノートで無意味なことをやめ、<br />本当に意味のあることに集中するライダー・キャロル(Ryder Carroll)
バレットジャーナルの発案者。デジタルプロダクト・デザイナー
ニューヨークのデザイン会社でアプリやゲームなどのデジタルコンテンツの開発に携わり、これまでアディダスやアメリカン・エキスプレス、タルボットなどのデザインに関わる。バレットジャーナルは、デジタル世代のための人生を変えるアナログ・メソッドとして注目を集め、ニューヨーク・タイムズ、ウォール・ストリート・ジャーナル、ファスト・カンパニー、LAタイムズ、BBC、ブルームバーグなど多くのメディアで紹介。またたく間に世界的なブームとなる。初めての公式ガイドとなる本書は、アメリカで発売後ベストセラーとなり、世界29か国で刊行される。
著者公式サイト
http://www.rydercarroll.com/
バレットジャーナル公式サイト
https://bulletjournal.com/

 本書の目的は、人生においてなにより価値のあるふたつの資源──時間とエネルギー──の使い方に、みなさんが留意するようになることだ。これからみなさんは、その貴重な時間とエネルギーを投資して本書を読んでいくのだから、バレットジャーナルでできることを、まず説明しておこう。

 バレットジャーナルを活用すれば、取り組む作業の数を減らし、大きな成果をあげられる。無意味なことに取り組むのをやめ、本当に意味のあるものを見きわめ、それに集中できるようになる。

 どうすればそんなことができるのだろう? 「生産性」「マインドフルネス」「意志力」という3本の柱を、杓子定規ではなく、融通がきいて、なにより実用的な枠組みに組み込めばいい。では、ひとつずつ見ていこう。

生産性をあげる──ぼやけていた問題を明確にとらえる

「しなければならないこと」があまりにも多すぎて、心が折れそうになったことはないだろうか。ときに、人生はモグラ叩きのゲームのように思える。

 次から次へと押し寄せてくる仕事や用事、ミーティング、メール、メッセージの嵐を片っ端からやっつけなくてはならない。四六時中、マルチタスクをこなすしかなくなり、姉さんとビデオ通話をしている最中でさえ、室内をうろうろと歩きまわってウォーキングに励むことになる。

 万事がこんな調子で、いつも複数の用事が頭のなかにあって、ひとつのことにきちんと集中できない。気持ちがあせるばかりで、満たされることがない。

 すると睡眠を犠牲にするしかなくなり、できるかぎり睡眠時間を削ることになる──だから朝起きたときにもまだ疲れが残っていて、まるでゾンビのようにげっそりとしている。こうした状況を、少し客観的に眺めてみよう。1950年から2000年にかけて、アメリカ人の生産性は毎年1~4%、上昇を続けた(*1)。

 ところが2005年以降、先進国における労働生産性の伸び率は鈍化し、2016年、アメリカ人の生産性は低下した(*2)。もしかすると、急速に発展するテクノロジーによって無限とも思えるほど選択肢が増えたせいで、僕たちは忙しくすごしてはいるけれど、その実、生産性自体はちっともあがっていないのかもしれない。

 生産性の低下は、あふれかえる情報に麻痺しているせいだという説もある。神経科学者のダニエル・レヴィティンは著書『The Organized Mind(整理された思考)』のなかで、情報過多はマリファナの喫煙や極度の疲労よりも、集中力低下の原因となっていると指摘した(*3)。

 つまり、生産性をあげるためには、日々、押し寄せてくるデジタルの情報の波をなんとかして押しとどめる必要がある。そこで登場するのが、アナログのソリューション、「バレットジャーナル」だ。

 ネットワークと接続していない空間で、じっくりと問題を検討し、考え、集中するのだ。ノートをひらいているあいだは、ネットを遮断できる。すると一時的に情報の流入を押しとどめ、人生について考えられるようになる。ぼやけていた問題がはっきりと見えてきて、日々の生活を明確に検討できるようになるのだ。

 バレットジャーナルを活用すれば、頭のなかのごちゃごちゃを整理し、問題を客観視したうえで検討できるようになる。

(注)
*1 Neil Irwin, “Why Is Productivity So Weak? Three Theories,” New York Times,April 28, 2016, https://www.nytimes.com/2016/04/29/upshot/why-is-productivity-so-weak-three-theories.html.
*2 Bureau of Labor Statistics, https://www.bls.gov/opub/btn/volume-6/below-trend-the-us-productivity-slowdown-since-the-great-recession.htm.
*3 Daniel J. Levitin, “Why the Modern World Is Bad for Your Brain,” TheGuardian, January 15, 2018, https://www.theguardian.com/science/2015/jan/18/modern-world- bad-for-brain-daniel-j-levitin-organized-mind-information-overload.