“公立中学校”でこんなことができるのか……。「定期テスト廃止」「宿題廃止」「クラス担任制廃止」など、数々の大胆な改革で全国から注目を集める、千代田区立麹町中学校。生徒、教員、そして保護者までもが主体性を発揮し、生き生きとした教育活動が展開されている。その改革の中心となり、著書『学校の「当たり前」をやめた。』(時事通信社)がベストセラーとなった工藤勇一校長に、「改革の狙いは何か?」「なぜ、改革を実行できるのか?」などをテーマに語っていただいた。その言葉は、組織活性化、組織改革に悩むビジネスパーソンにも多くの示唆を与えるはずだ。(構成:小嶋優子)

画期的な公立中学校改革を進める、千代田区立麹町中学校の工藤勇一校長。

「対立があって当たり前」という現実が出発点

――ここまで2回にわたってお話を伺い、工藤先生が生徒たちに教えている「心は一つにならない」「対立があって当たり前」という前提は、多様化する社会にあってとても重要だと思いました。通常、学校ではそうした現実には触れずに、きれいごとを教えられます。テレビドラマも昔は、争いごとがあっても最後は団結するというパターンが王道でした。

工藤 そうですね。学園もののテレビドラマなどで、バラバラだったものがだんだんまとまっていき最後は勝利する、というサクセスストーリーが描かれますが、あれは“まやかし”なんですよね。現実はそうではない。むしろ、そうではないということを前提にすることで、本当の意味で子どもたちにリーダーシップを教えることができると思うんです。

――どういうことですか?

工藤 具体的にご説明しましょう。麹町中学校には全校集会と生徒集会がありますが、全校集会は教員主導、生徒集会は子どもたち主導の集会と明確に分けています。生徒集会は完全に子どもたちのものなので、教員は後ろに下がり、すべてを子どもたちに任せます。うるさくしている生徒がいても、教員は注意しません。それでは、「生徒主導」ではなくなってしまうからです。

 ただ、そうするためには、生徒集会のリーダーたちに事前に指導しておく必要があります。まず第一に、「先生は助けないよ」と明言します。そのうえで、「この集会は何のためにやるの?」「どうやってやるの?」「そのやり方だと、みんなつまらなくなって寝ちゃうんじゃない?」「騒ぎ出す子もいるかもしれないよ。そうしたらどうするの?」などと質問していって、自分たちで考えさせるのです。

――「先生は助けない」と、あえて突き放すわけですね……。

工藤 そうです。もしも、騒いでいる生徒に対して、教員が「静かにしろ!」などと注意していたら、リーダーたちは、何かあったら先生が助けてくれると思って、工夫しなくなりますよね。そのうえ、「生徒集会に協力しないあいつらが悪い」という発想になりかねない。これでは、「自律」につながりません。

 そして、生徒集会のリーダーたちには、人が協力してくれないのは当たり前、話も聞いてくれないし動いてもくれないものだ、という現実からスタートしてもらって、「どうしたらみんなが聞いてくれるだろう?」「どの順番で進めたら興味を持ってくれるだろう?」「どうしたら、全生徒を当事者にできるだろうか?」と、自分の頭で考えてもらうのです。