問われる農協法との整合性
農水省は行政指導に含み

 では、京都府のJAはどのように議決権を持つ正組合員と持たない准組合員を区分しているのか。

 具体的な説明に入る前に、法律上の定義を見てみよう。農協法による、JAの正組合員の定義はシンプルで、ずばり「農業者」だ。農業者とは、(1)自ら農業を営み、または農業に従事する個人、(2)農業を営む法人――を意味する。

 農水省が執筆する『逐条解説農業協同組合法』によれば、「農業を営む」の定義を「営利目的で農業を継続し、社会通念上、それが事業の遂行とみられる程度のものであることをいう。自家菜園は該当しない」としている。

「農業に従事する個人」については、「農家の経営主を除く家族で農業に従事している者や農業労働者など。少なくとも自分の業として農業に従事することが必要で、余暇をみて数日間農耕に従事するような者はこれに該当しない」と解説している。

 以上の前提を踏まえれば、京都府のJAが定める「農業者」の定義や正組合員の要件を見ると、首をかしげざるを得ない。

 JAグループ京都のホームページによれば、組合員の議決権の有無は、その組合員が「農業に関わる多岐の活動」にどれだけ参加しているかを評価し、個人ごとに点数を付けて決めるという。

 下図を見てほしい。これはJA京都市が組合員の議決権の有無を判断するのに使うチェックシート(調査票)だ。

 調査項目の中には、「農業の経営を行っている」といった「農業者」そのものの項目がある一方、JAの「直売所などでの農畜産物の購入」や「生活用品の購入」、さらに「貯金・定期積金」「共済加入」など農協法上の「農業者」の定義とはかけ離れた項目も散見される。

 組合員区分の見直しを行ったJA京都では、約1.8万人が、議決権を新たに得た。この大部分が、従来「非農家=准組合員」だった地域住民とみられる。

 彼らは、農協法の「農業者」の要件である「営利目的」の農業を始めたというのだろうか。そうでなければ、農協法を逸脱しかねない「低いハードル」で地域住民を「農業者」にしてしまっているのではと疑わざるを得ない。

 ダイヤモンド編集部は京都府の五つのJAに、組合員への議決権付与を決めるチェックシートの配点(評価点の決め方)や、准組合員から正組合員になった人は農協法上の「農業者」と言えるのか、などを問う質問状を送ったが、期日までに回答はなかった。