銀行における外貨建て保険への苦情の増加や、かんぽ生命保険と日本郵便を巡る不適切販売問題など、代理店との関係性が経営における大きな焦点となる中で、日本生命保険は今後どう向き合っていくのか。その戦略などについて、清水博社長に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 中村正毅)
──外貨建て保険の販売資格制度の創設について、銀行業界は既存の変額保険の販売資格などで代用できるのではないかと主張しています。あえて外貨専用の資格を設ける狙いは何でしょうか。
苦情を分析すると、高齢者を中心に「元本が割れるとは思っていなかった」といった内容が多く、変額保険とは全く異なる特徴があります。
われわれとしては、苦情に対してきめ細かく対応していきたい。アフターフォローの強化、販売リテラシーの強化、適合性の確認の強化の三つのうちどれか一つではなく、全てやることが大事です。
その中の販売リテラシー強化の一つとして、外貨建て保険の商品特性や苦情の内容を踏まえた上で、資格試験が必要だと考えているわけです。
すでに外貨建て保険などを販売している銀行にとって、新しい資格試験が必要になるのは大変だということはよく分かっています。ですので、丁寧に銀行業界と対話し、互いに一致点を見いだしていきたい。まだ本格的な検討をスタートしたという段階です。
──今後販売するのに資格が必要になることにした場合、現在資格もないままに販売してしまって大丈夫なのかという指摘があります。
繰り返しになりますが、資格試験だけが大事だと思っているわけではありません。販売リテラシー強化の一つが資格試験の導入であり、並行して生命保険業界から教材や資料を提供することも含めて、販売する側として必要な知識、苦情の特性を踏まえた行動の仕方、重きを置くべきポイントがあるわけです。
資格試験は重要ですが、導入すれば(苦情の問題が)解決するわけではありません。資格試験以外のことも同時に進めていき、問題解決に少しでもつなげたいと考えています。
──銀行側に対して、今後協議を進める上でここだけは理解してほしいといった部分はありますか。
そういう視点では、物事を考えていません。代理店全体、乗り合い代理店、金融機関代理店もそうですが、お客さま本位の業務運営の在り方を考えた場合に、元受けの保険会社と、販売する代理店が一緒になって考えていきたい。
互いに責任を押し付け合っていても、お客さま本位の業務運営は進みません。同じ船に乗っているという意識を持って共同で進める。これに尽きます。