かんぽ生命保険の不適切販売問題を巡り、保険業法違反や社内規定違反の疑いがある契約が、1万2836件に上ることを公表した日本郵政グループ。
長年不適切販売を見過ごしてきた背景にあるのは、グループにおけるガバナンス(統治)の機能不全だ。経営を揺るがすような問題を、見過ごすほどの統治不全に陥ったのは一体なぜなのか。弁護士らで構成する特別調査委員会がまとめた報告書を基に、その要因をひもとく。
「持ち株会社としての日本郵政が果たすべき役割やグループガバナンスのあり方について、全役員のコンセンサスが得られていなかった」
調査委の報告書は、わずか2行でそう淡々と記述しているが、指摘している問題は想像以上に大きい。日本郵政が持ち株会社としての役割を果たしていないと言っているに等しいからだ。
調査委の伊藤鉄男委員長は記者会見で、持ち株会社の統治について、「経営陣がまともな議論をしてこなかったということか」という質問に対し、「間違っていない」と答えている。
一方で、日本郵政の長門正貢社長は後段の会見で「全くの間違い。鬼のように議論している」と色をなして反論したが、調査委がここで指摘したかったのは、議論の頻度や深度ではなく、むしろ統治の実効性の方だ。
いくら議論をしてみたところで、経営陣の合意形成ができていないのであれば、大きな方向性が定まらないまま、グループ内の統治をしようとしていたことになる。
経営陣それぞれの向いている方角がバラバラな状態で、適正な統治ができるはずもなく、議論すること自体が目的化していたように映る。