トヨタグループの主要部品メーカーであるアイシン精機は事業のスクラップ&ビルドを進め、自動車のCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング&サービス、電動化の四つの技術トレンド)領域に経営資源をシフトしている。伊勢清貴・アイシン精機社長に、日本電産や中国メーカーといった後発組の競合との戦い方を聞いた。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

変革しないと生き残れない
二大会社の統合は「CASE」対応に必須

――昨年10月末、主要子会社で自動変速機の世界最大手のアイシン・エィ・ダブリュ(AW)との経営統合を発表し、自動車業界を驚かせました。 

アイシン精機 取締役社長 伊勢清貴アイシン精機 取締役社長 伊勢清貴

 私が18年6月に社長になってから事業構造の変革を急いでいます。(CASEの技術開発などのために)投資がかさむので、既存事業をスクラップして競争力がある製品にシフトしています。

 リーンな(筋肉質な)会社にするために固定費の低減にも努めています。AWの統合を進めたのもその一環です。

 2020年は決めたことをやり切る一年です。これまでは(実際に統合させるのではなく)「バーチャル・カンパニー制」(「パワートレイン」「走行安全」など5つのバーチャル・カンパニーとアイシングループ本社で構成し、組織横断で連携することで競争力を高める取り組み)をやってきましたが、会社が分かれているとどうしても「心」の壁ができてしまって改革のスピードが遅かった。50年間も分社した状態で、かつそれぞれが「独立して事業を進める」気風がありましたから。

 それでもアイシン精機とAWの経営統合を発表した。いまも納得している人と納得していない人がいるかもしれませんが、決めたのだから、やるしかない。そして、やるなら早いほうがいい。正式統合は21年4月ですが、調達部門などできるところから前倒しで統合作業を進めています。